みなさん,こんばんは.
今日はお彼岸でしたね.
お墓参りをして,ご先祖様のことを
思い出されている方も多いと思います.
そして今日は
もしかすると,命の繋がりを考える日
かもしれません.
2018年3月に公開された映画
『リメンバー・ミー』は
1年に1度だけ他界した家族と再会
できるとされる祝祭をテーマにした、
ディズニー/ピクサーによる長編アニメ
で,命の繋がりを描いています.
https://www.youtube.com/watch?v=-9b9jireyKQ
私はこの映画を家族と一緒に映画館へ
観に行きました.
そして家族の愛が描かれたシーンでは
思わず涙してしまいました.
ただ隣をみましたら,家族で泣いていた
のは私だけでしたけども...
昔から親子愛,家族愛に弱いのです.
そして
私は“この命の繋がり”を
考えるといつも思い出す
エピソードがあります.
それは17年前の私が医師になって
3年目,小児専門の病院に脳神経外科医
として勤務していた時のことです.
1歳数ヵ月の女の子が,体調不良を
きっかけに脳腫瘍が見つかり,
脳神経外科へ緊急入院してきました.
まだ両手で楽に抱えられるくらいの
小さいからだつきで,嘔気のためミルク
が飲めなく,泣く力も出ないくらい
弱っていました.
すぐに栄養剤を点滴し,脱水状態を回復
させて,1週間後に脳腫瘍を摘出する
手術を行いました.ただ脳腫瘍は脳の奥
のとても大切な部分にまで広がっていて
全てを取り除くことはできませんでした.
そして
小児の脳腫瘍は非常に悪性度が高く,
白血病の治癒率が上がってきている現在
では,こどもの病気で最も完治が難しい
とされています.
この女の子の脳腫瘍も検査の結果,
悪性の脳腫瘍でした.
その後,体調は回復し,ミルクも飲める
ようになって,その子のお気に入りの
ぬいぐるみであやしたり,声をかけたり
するとかわいらしい笑顔を見せるように
なりました.
ただその女の子の悪性の脳腫瘍は,
抗がん剤治療や再手術など,できる
限りの治療を行っても,わずか数ヵ月で,
その子の命を奪うほどまでに拡大して
きました.
「どうしようもない」
再発してくる脳腫瘍のMRI画像を
上司と一緒に気落ちしながら
眺めるしかありませんでした.
そして
脳神経外科部長と家族の長い話し合いの
結果,根治を目指した治療を終えること
になりました.
その後,病気は進行し,徐々に女の子は
反応が鈍くなり,最後の時が来ました.
その時,
その女の子のお母さんが,ベッドで
横たわる我が子を見てこう言いました.
「この子の最後は,私の腕の中で迎え
させたいと思います.」
そこから数十分後,女の子はお母さんに
抱かれながらあの世に旅立ちました.
この時の母親の行動を見て
”母の愛情ってこれほどまでに強い
ものなのだ”と思っていました.
それは
我が娘を腕で抱いて,子どもの表情や
体の動き,呼吸の音,感じる体のぬく
もりや,子どもの手足の感触,その子の
香りなど,自分が記憶として残せる
すべての感覚を使って,娘との残り時間
を過ごしたお母さんの様子をみて
感じたことでした.
なぜなら
当時の私は,自分のこどもの死は
どうしても受け入れられないもので
あって,眼をそむけたくなるもの
なのではないかと思っていたのです.
そのころ
「親の気持ちというのは,永野が自分の
こどもを持ったときに本当に理解できる
ものだ」
と部長に言われたことを覚えています.
そこから17年の時が流れ
自分にもこどもができて育児をして
いる今,その当時の母親の心境を
思うと簡単には言葉に表せない
様々な感情(悲しみ,愛情,懺悔,
罪悪感,恨み,などなど)がきっと
あったのだろうとわかるようになり
ました.
そして
今ならば,自分もその母親と同じ行動
をとれるのではないだろうかと思っています.
さらに
その当時,自分の心に強く残った疑問,
「なぜ,この子はこの短い時間で一生を
終えなければならないのか.」
にも,ようやく長い年月をかけて
自分なりの答えが見つかってきたように
思えています.
そのひとつは
命を失ったことは,どんなに長い時間を
経ても,とても悲しく,辛いことには
変わりない.
けれど,
その悲しみへの視線の向きを少し変える
とそれ以外のこと気づけると
分かったことです.
それは
悲しみの奥には,
失われることのない
愛や喜びなどの経験があること.
例えば,その女の子であれば,
ぬいぐるみで遊んで一緒に笑ったことや,
抱っこしてあやしたときの泣き声とか
やわらかい体の感触とか,痛い注射を
我慢して頑張ったときの表情とか,
それらの愛おしい経験は無くならないこと,
そしてそれが,自分の記憶の中にあること.
この患者さんと関わった時間を
慈しむ感覚を自分の中に残して,
次の患者さんに出会って
診療を続けていく.
それが
私にとって
患者さんのいのちをつなげる
ということになるのかもしれないと
思うようになってきたのです.
最後まで読んで頂きありがとうございました.