福島第一原発作業員の死
5月14日
今日の昼ごろ、スペイン国営テレビを見ていると、日本の福島第一原発で働いていた作業員が死亡という、重大なニュースが流れ驚きました。
慌ててJSTV(国際衛星放送)に切り替え、その内容を確認したところ、作業中に亡くなったのは紛れもない事実のようですが、死因は不明で、現在調査中とありました。
スペイン国営テレビでは、原発最初の被害者として扱い、あたかも放射線被爆による事故死というニュアンスで報道していました。
しかし、実際には、コンピュータでの断層撮影(CT)検査や血液検査を行った結果、「心筋梗塞」である可能性が大きい、と病院の担当医から発表されました。
多少の時間をかけ、しっかり検証するのは結構ですが、他のことと違い、このような重大なできごとは、速やかに全世界に向かって事実を発信しないと、風評被害に更に拍車を掛けてしまいます。
現在、スペイン政府は、日本への渡航について、被災地をのぞき、東京などは自粛の対象から外していますが、またぞろ厳しい処置が取られかねません。
原発内での過酷な作業には、同情の念を抱いて余りあり、尊い命が失われたことに変わりはありませんが、メルトダウンが他基にも及んでいると予測される現況を考えると、放射線被爆と心筋梗塞では、その死因に天と地ほどの差があります。
地震と津波という天災から発生した原発事故ではあっても、福島原発における官民の一挙手一投足は、全世界の人たちが毎日、固唾を飲んで見守っています。
好材料も悪材料も、決して隠蔽することなく、正しく速やかに伝えることが、大事故を引き起こした当事者、当事国としての全世界に対する責務だと考えています。
ロルカの地震 2
今日、ロルカ市内で、震災で亡くなった方々の葬儀が厳かに行われ、
フェリッペ皇太子殿下夫妻やサパテロ総理大臣も参列されました。
ご遺族の葬儀会場への到着が遅れ、皇太子や総理大臣が、式場内で20分ほど待たされる光景が
TVで映し出されていました。
その間、コメンテーターが色々と解説していましたが、ほんのちょっと前までは、
日本の大震災を遠い国で起きたことと思っていたが・・・というような発言もありました。
それに、葬儀報道番組で適切かどうかは、意見の分かれるところでしょうが、
被害者の中には、妊娠8ヶ月の女性が含まれていたところから、
この場合、死亡は1人と勘定するのか、あるいは2人になるのか、
とゲスト出演していた司祭に質問をしていました。
答えは2人とするそうです。
日本ではどうなんでしょうかね

余談ですが、確か刑法上では、人とみなす場合、色々な説があり、
陣痛が始まったときを人とする「陣痛説」、
母親から体の一部が出たときとする「一部露出説」、
体の全部が出た瞬間の「全体露出説」、
赤ちゃんがオギャァ!と泣いたとき、いわゆる「独立呼吸説」などがあるようです。
このことは、刑法の罪状に大きく影響するので大切なことです。
恐ろしいことですが、もしこの赤ちゃんを殺してしまった場合、
堕胎の罪か殺人罪では量刑が全く違ってくるからです。
判例を見た事が無いので分かりませんが、「全体露出説」が採用されているのではないでしょうか。
「一部・・・」だったかもしれません。誰か教えてください。
民法上は、相続権の問題などもあるので、「全体・・・」か「独立・・・」だと思います。
TVの映像では、遺族の方々の中には、一見、アフリカ系のの人もいたようですが、
これもコメンテーターだったか、アナウンサーだったかはっきりしませんが、
今回の被害者は全員スペイン人ですか、と尋ねていました。全員スペイン人だそうです。
ロルカには、凡そ80カ国の人が住んでいるらしいので、恐らく帰化した人かもしれません。
※追記※
*人とは・・・、の問いかけに、二人の方から回答を頂きました。
お一人は、徳島市の法律事務所にお勤めのM・Mさんから、
お一人は、徳島市の法律事務所にお勤めのM・Mさんから、
もうお一人は、早稲田大学法学部ご出身で、神戸市にお住まいのY・Kさんからです。
刑法上の人は「一部露出」、民法上は全部露出(全体露出)が通説になっているそうです。
M・MさんY・Kさん、ありがとうございました。
刑法上の人は「一部露出」、民法上は全部露出(全体露出)が通説になっているそうです。
M・MさんY・Kさん、ありがとうございました。
ロルカの地震
突発事項です。
おととい(10日)の夕刻、スペインの南東部、首都マドリードから凡そ450km離れた、
ムルシア県 「ロルカ」で、マグネチュード4-5.1の地震が2度発生し、
9人(スペイン時間11日午後3時時点)が死亡、300人近くが重軽傷を負っています。
ロルカは、人口9万人ほどの街で、グラナダからバレンシア、バルセロナに向かう国道沿いに位置する
昔からの交通の要衝です。
日本人観光客も、すぐ近くのパラドール(国営ホテル)で昼食をするというコースが組まれていますので
街の名前には馴染みがあると思います。
僕も何度か行きましたが、アラブの統治時代の雰囲気が残り、歴史の香りがする素敵なところです。
建物も、2万棟ほどが全壊や半壊、の被害を受けています。
東北大地震とは規模が違いますが、ほとんど地震が起きないスペインにあっては大惨事です。
ヘリコプターからの映像では、多くの家の屋根が抜け落ちたり、倒壊した建物があちらこちに見られ
地震の凄まじさが感じられます。
地震の規模を示すマグネチュードは、そんなに高い(大きい)ものではありませんが、
地震の被害を想定していないスペインでは、ほとんどの建物、特に古いものほど、
十分な耐震設計をして建てていないので、鉄筋の入ってないもの、単にレンガを積み重ねた程度のものが多く、大惨事となってしまいました。
かといって、スペインも、地震・津波が皆無というわけではありません。
18世紀の中ごろに、リスボンが壊滅し、6万人が犠牲になった大地震の時にも相当な被害がでています。
同時に、大西洋岸のカディスや、アメリカ新大陸を発見したコロンブスが出港したウエルバ(パロス)には、
10メートルを超える津波が押し寄せたという記録も残っています。
僕も、40年余りスペインで暮らしていますが、マドリードに着いて1ヶ月くらい経った8月のある日、
地震に遭遇した経験があります。
「なーんだ、スペインでも地震があるんだ」と意にも介さなかったほどです。
地震の規模分からなかったものの、日本に居るときに幾度となく経験した「微震」にも満たないものでした。
しかし、翌朝、新聞を見て驚きました。
一流紙の第一面に、前の日の地震が全ページを割いて大々的に報道されていたのです。
下宿のおばさんはじめ、カフェのおっちゃんやバスの運転手さん、
寄ると触るとその話題で持ちきりでした。
それ以後、僕の知る限りではマドリードで体感地震は起きていません。
大西洋側の各地で地震の報道は時たまありますが、大惨事に至ることはありませんでした。
僕も、東北大震災の後、マドリードには地震を始めとする天災は無いので安心ですと、
友人知人にメールを送りまくりましたので、受け取った人はきっと驚いているでしょうね。
もっとも、マドリードでは、と断ってはおりますが・・・、スペインなのは同じですね。
今回、地震の起きた地中海沿岸(ロルカは25㎞ほど内陸に入っていますが)に至っては、
ここで地震が起きましたと、記録に残るようなところは見当たりません。
余談の上に未確認(ご存知の方は教えてください)ですが、
この日は、ローマに大地震があるという情報が流れ、多くの人が郊外に避難していたということです。
ローマでは起きず、対岸というには余りにも離れていますが、
地中海を挟んだロルカで起きてしまいました。
ほんの少し前まで、日本の大地震による被害の状況や、
福島の原発事故の成り行きを的確に捉えて報道していたスペインですが、
地震や津波の被災者や原発事故の被害者には、一定の思いは馳せつつ、
どこか対岸の火事的な一面も見受けられました。
今度の地震で、自然の怖さを身をもって体験したスペイン政府は直ちに所管の大臣が現地に飛び、
被害状況をヘリコプター把握し、当面の援助に乗り出すなど、すばやく動きました。
総理大臣も、現地に飛ぶ予定ですが、それに先立ち国会では、ロルカの復興には、
費用の上限は設けない、確固たる姿勢で臨むと演説し、与野党議員、
スタンディングオベーションを受けていたのが印象的でした。
日本政府も、このように被災者の先行きに安心感を与えるような方向を示していれば、
国民の感情も違ったものになったでしょう。
スペインも、現在、政府与党の人気が凋落し、次の選挙では敗北が濃厚で、
政権交代が視野に入っています。
サパテロ総理の発言は、菅総理のように、結果的には英断であっても、
唐突に発表して国民を面食らわせた浜岡原発の全基運転停止要請のように、
延命を図る意図からではありません。
なぜなら、すでに次の総理候補を辞退しているからです。
個人的には、社会労働党のサパテロ党首は好きではありませんが、
スペインの指導者は、どちらの党が政権を担っても、いざという時には凛とした態度で臨みます。
国民党政権時代のアスナール首相もそうでした。
テロ撃滅政策を強行した首相は、通勤路に仕掛けられた爆薬で、自身の車が爆破されるという、
まさに九死に一生を得た経験をしていますが、その翌日から、何事も無かったように執務し、
国民を驚かせました。
被災地における日本人の礼儀正しさ、マナーの好さ、冷静さ、大げさに言えば、道行く人までが、
アジア人を見かけると、日本人?と確認したうえで、その節操ある行動を褒めちぎりました。
友人のアンダルシア人は、
「日本のような大災害がアンダルシア地方で起きたら・・想像するだけで怖くなる」
といっていましたが、地震のあったロルカから20㎞ほどのところにアンダルシアとの州境があります。
ところが、日本の被災地の状況を目の当たりにした直後のことあり、その影響もあったのでしょうか、
戸外に避難した人たちが、食料を分け合って食べる映像もTVに映し出されていました。
悲惨な状況の中では、一服の清涼剤のように、気持ちを爽やかにしてくれます。
ロルカの人たちは最悪の状況の下、日本人から冷静さを学びました。
日本政府の指導者は、スペインの政治家から何かを学んだください。