92年、アメリカの東海岸に暮らす裕福な一家に育った成績優秀な青年が、アラスカの荒野で餓死しているのが発見された。当時全米で最大の関心事となった“青年の死の謎”を綿密に追跡取材して著したノンフィクション『荒野へ』をもとに、ショーン・ペン監督が10年以上の歳月をかけ映画化。
ワシントンDC郊外の高級住宅地で育った主人公のクリス・マッカンドレスは、将来を約束されたエリート・コースにいながらある日すべてを捨てて家を出る。ヒッチハイクや野宿をしながら旅を続ける彼の最終目的地は、アメリカ最北の地・アラスカ。だが、荒野で究極の孤独と向き合い自己再生を図るクリスを、大自然は容赦なく死の罠へと誘いこんでいく…。
物質社会から逃れ、貯金や車、名前さえも捨てて最大限の自由を謳歌しようとするクリスは世間知らずの“青臭い”若者に見えるかもしれない。だが、裕福で偽善的な両親から彼が幼いころより受けた重圧と束縛には、多少なりとも共感できる人は多いハズ。そんな閉塞感から逃れようと旅に出たクリスは、ヒッチハイクをしながら様々な人々と出会ううち、彼本来の穏やかな人柄を取り戻していく。
ロードムービーは大好きなんですが、普通のロードムービーとは一味もふた味も違う素晴らしい作品だった。
時間軸がありますが、とても分かり易く描かれていて構成もとても巧い。ショーン・ペンの傑作。

クリスの旅ですが、誰もがこんな気持ちを持った事があると思う。この実在した人物クリスの旅を批判的に言う方も多かったらしい。現実っていうものは厳しいものですからね。
時々カメラ目線ではしゃぐ場面があったんですが、一緒に旅をしているような不思議な感覚になりますね。なかなか勇気のある演出をしています。
「幸福が現実となるのはそれを誰かと分かち合った時だ」
この答えが見つかったのに死を迎えてしまったクリス。残念だ。