価値マップでわかる日本人の特殊性 その2 

 

イングルハートは、同じ価値マップ(縦軸と横軸は同じ)を所得別に区分した。そうすると、それぞれの国の所得と価値観には明白な関係があった。高所得国は「世俗-合理的価値」と「自己表現価値」が高く、低所得国は「伝統的価値」と「生存価値」が高い。もちろんこれは、所得が高くなるにつれて人々は世俗的になり、自己表現(自分らしさ)を求め、所得が低ければ伝統的価値観に縛りつけられ、生きていく(生存価値)だけで精一杯になる、と説明する事もできる。すなわち文化的な価値観は、ある程度まで所得水準に依存しているのだ。

 

日本のように「世俗-合理的価値」が極めて高いのに「自己表現価値」が相対的に低い(上位から三分の一)国と、北米・オセアニア・北ヨーロッパのように「自己表現価値」を重んじる一方で、「伝統的価値」を尊重する国があることがわかる。私たちは日本を「村社会」だと思っているが、アフリカや南アジア、ラテンアメリカなどの国々はもちろん、ヨーロッパ諸国や中国・韓国と比べても、日本人は伝統的価値を重視しておらず、「村社会」が高いわけではない。逆にイングルハートの調査では、日本人の世俗的指数は突出しているのだ。

 

またイングルハートが中心となっておこなっている世界規模の価値観調査でで、日本人の特徴は。①国のために戦う気がなく、②日本人としての誇りがなく、➂権力や権威を嫌う、という結果であった。戦争体験や自虐史観の影響もあるかも知れないが、イングルハートの価値マップを見れば、この結果は日本人の極端な世俗性と整合的だ。

 

更にそれを裏付ける日本、韓国、中国、アメリカの四か国での調査結果を紹介する。「人生の目標」についての質問だ。ここでは回答者に、以下の四つの選択肢が示された(複数回答可)。

A 親が私を誇りに思うように努めることが人生の目標の一つである(あった)。

B 他人に烏合するよりも、自分らしくありたい。

C 友人の期待に応えるように努力している。

D 自分の人生の目標は自分で決める。

調査結果から、韓国人や中国人は、「自己表現」だけでなく、「親が誇りに思う」とか、「友人の期待に応える」ことを人生の重要な目標と考えている。彼らは、家族や世間を強く意識しているのだ。アメリカ人は、友人の期待はそれほど気にしないが、家族から自分の事を誇りに思ってもらいたいと思っている。それに対し日本人は、家族や友人たちの期待に反しても、自分の人生は自分で決め、自分らしくありたいと強く思っている。少なくともこの四カ国の中で、最も「個人主義的」な生き方をしているのは私たち日本人なのだ。

 

おさむちゃん