高タンパク質/低炭水化物食の影響について
肥満、2型糖尿病、心臓病、脳卒中、認知症、癌などの病気の発症率は、加齢と共に急激に上昇する。摂取カロリーを最大で4割ほど減らすことで、全ての動物種は寿命を延ばすことができると言うことを聞いたことがある人もいると思う。カロリー制限と老化の研究には長い歴史がある。酵母細胞からミミズ、ハエ、サルに至るまで多くの生物について、カロリー制限が寿命を延ばしたと言う報告が相次いでいる。
ヒト(やマウス、ハエ)の生理的機構の中心には、2つの対立する生化学的経路がある。1つ目は「長寿経路」、もう1つは「成長・繁殖経路」である。これら2つのシステムは互いに制御し合う関係にある。一方が機能している時は、他方は機能しない。食料と栄養が不足すると、長寿経路が作動し、成長・繁殖経路は停止する。細胞とDNAの修復・維持システムが活性化し、動物の健康を維持する。断食が長寿につながると言われている由縁である。当たり前とも言えるが、食糧が不足していると、成長しないし繁殖能力も不足する。食料が豊富だと、成長・繁殖経路が発動し、その代償として寿命は短くなってしまうという事だ。
摂取カロリーが一定の場合で、タンパク質と炭水化物委の比率を変えた場合どうなるのだろうか? 高タンパク質/低炭水化物食は、確かにダイエットには有効であるようだ。但し、ハエやマウスの実験によると、ある欠点が確認されている。それは「寿命」である。マウスの例では、低タンパク質/高炭水化物食ではテロメアがより長く、より長生きした。高タンパク質/低炭水化物食のマウスは、テロメアと寿命が長かった。テロメアの長さと寿命には相関があると報告されている。この結果を受け、「だったら、肥満の方が長寿になる」と解釈するのは「勇み足である」と言っておこう。
「ブルーゾーン」と呼ばれる世界の超長寿地域に暮らす全ての人が、ある共通したパターンの食事を摂っている。ブルーゾーンで最も有名なのは、日本の沖縄の人々である。沖縄は100歳以上の人口割合が他の先進国平均の5倍である。サツマイモと葉物野菜を中心に、少量の魚と赤身肉を組み合わせた伝統的な沖縄食のタンパク質比率はわずか9%(食糧難の地域を除けば世界最低水準)、炭水化物が85%、そして脂肪がわずか6%である。厚生労働省の指針では、PFC(タンパク質/脂肪/炭水化物)バランスは2:2:6なので、これは高炭水化物/低タンパク質・低脂肪食であることが分かる。長寿かつ伝統的な沖縄の食事を摂っている人は、肥満とほぼ無縁であった。その理由の一つは、食事の食物繊維含有量が高いからである。これはとても重要な事だ。食事に十分な食物繊維が含まれると、カロリーの過剰摂取を駆り立てるタンパク質欲を抑えられる。食物繊維は胃で膨張し、消化速度を遅らせ、腸内微生物の餌になる。これら全てが組み合わさって、空腹感を抑える効果がある。
つまり、食物繊維を豊富に摂取し、高炭水化物/低タンパク質・低脂肪食で、タンパク質欲に打ち勝ち(ファスティングも加えるなど)摂取カロリーを抑える事ができれば、(あなたにとって最長の)長寿になれると言うことになる。高タンパク質/低炭水化物食でダイエットに成功した方が、生活習慣病から生じるリスクを回避できて、肥満でいるよりも長生きできると言う考え方もあるだろう。
「人は見たいものしか見ない」:ユリウス・カエサル
「人間は自分の聞きたい言葉しか聞かない」:ゲーテ
Good Luck to you!
おさむちゃん