僕が教えるのは大学の芸術学部3年生。
1年2年で技術基礎的なことは大半を習得しています。
3年後期からは、色やカタチもさることながら、
「デサインとはいったいなんだろう?」という問いを
もう一度いっしょになって、考えていきます。
今、教わるというより学び方を学生達は模索しています。
そういう学びの場のあり方を失敗と成功を繰り返しながら
構築していきたいと思っています。
1課題目は、「ない」デザイン。
「ない」ことについて考え、「ある」ことの意味を知る。
「ある」ことが当たり前になっている今だからこそ、
観察、思考、想像、などを通じて
あえて「ない」ことによって生まれる
まったく新しいコミュニケーションのカタチをデザインしてください。
ないといいな?が、あるといいな?になるような
そんなトキメキを感じるデザインを期待しています。
Tさんに続いて紹介するのは、
Hさんの作品。
「じょしごと」というブックレット。
ボールペンのインクがなくなったらという着想から生まれた
あるステショナリーブランドのノベルティ。
空のペンで儚い女心を書き綴ったブックレットです。
誰にも言えない気持ち、残したい思い出、
その感情と筆圧から生まれるエンプティともいうべきこの本だが、
ぎっしりと埋めつくされているように思えます。
プレゼン時には実際に手にとっても僕には殆ど見えない
老眼がすすんでいるのか?見えそうで見えない、
女心とはそういうものかと諦めてしまった。
感情の起伏で自然と浮かび上がる文字には
なにか、電子書籍には映せない
言霊のようなものを感じとれます。
見えないことで、より想像力や好奇心が旺盛になることに
気づきを覚えた作品でした。