窓の外は猛吹雪なのに、まったく音が聞こえてこないことに気づいた。空が大量の雪を叩きつけるように降っているはずなのに。きっとあの六花と呼ばれる奇跡のような形をした結晶の隙間に音を抱え込んでいるのだろう、なんて柄にもないことを想像してみた。それにしても、この雪はもう何日間降り続いているのだろう。外はパニック状態になっているのではないだろうか。そもそも、僕自身がどれくらいこの部屋に閉じ籠っているのかもわからなくなってきた。どこかで電線が切れてしまったのだろう、雪の重さか風の強さか、どちらにしても狂気のような天候がもたらした停電がずっと続いているのだった。

他にすることがないので、ずっと窓から雪が舞うのを見ていた。すると、僕の真正面のところでくるりと雪が旋回をするではないか。ちょうど人間の顔くらいの大きさの円を描くように。音が全く聞こえないものだから、無声映画のようなコミカルにその現象は見えるのだった。それから目を離せなくなった僕は、暫く見続けているうちに気づいた。狂ったように吹きすさぶ雪の舞は、一定の周期で僕の目の前で円を描いていることを。驚いて目玉が飛び出るほどに凝視していると、その円の中には目と口のような影が浮かんでくるのだった。新月をふたつ並べた目、半月を横に裂いたような口。明らかにこっちを向いて笑っている。やがて、はっきりと見てとれるようになったのだ、周期的に輪郭が現れ、僕を嘲笑うかのような顔が一瞬だけ浮かぶのが。

ところで今は何時ころなのだろうか、気を紛らわせるように僕は考えてみたのだが、視線はあの雪の顔から離せられなくなった。この吹雪はいつまで続くのだろうか、そもそもこの夜は本当に明けるのだろうか、この部屋からいつになったら出られるのだろうか、ところで僕は誰なのだろうか、ひょっとして僕は外の世界から忘れられてしまったのではないだろうか。

 

狂気に満ちた雪の笑顔は、ついに僕の真正面に浮かんだまま止まってしまった。その顔は窓に写る僕だった。