ーこんにちは、本日インタビューさせていただく執念です。よろしくお願いします。
ーよろしくお願いします!いやー、本当に楽しみにしていました。
ーそう言っていただけて嬉しい限りです。ではまずは自己紹介をお願いします
ーはい、信念と申します。学部は外国語学部でロシア語専攻に所属しております。
ーどうしてロシア語専攻を選んだんですか?
ーそれ聞かれると思いました笑。僕見た目的に何語専攻に見えます?
ーもうロシア語専攻と聞いてしまったのでその先入観を捨てきれませんが、敢えて言うならインドネシアとかですかね。
ー大当たりですよ。やっぱりそう見えますか。
ー正解があったんですか。
ーいや、僕の父、銀行員だったんですけど、入社したての時に余りの顔の濃さに周りからインドネシア人と言われてからかわれていたエピソードがあるんですよね。それでつい笑
ーそれは面白いですね。お父様はそんなに顔が濃いんですか。
ー濃いのは濃い、二重が異常に綺麗だし、なんと言ったって頭が大きいんです。少なくとも僕の1.2倍はある。あ、話を脱線させてしまいましたね。僕の悪い癖です。なぜロシア語を選んだかですよね。
ーそうですね。
ーそれはコサックダンスですね。
ーコサックダンス?
ーはい、そうです。コサックダンスです。ご存知ですか?
ー聞いたことはありますが。どのようなダンスなんですか?
ー僕も上手く説明できませんし、今はできません。
ー信念さん、何を言いたいんですか。
ーすいません。僕の悪い癖で。コサックダンスっていうのはロシア帝国の支配から東方に逃れたコサック達がやってたダンスです。だからコサックダンスと言うんですよね。コサックダンスを踊る度にロシアへの愛が強くなり、ロシア語専攻を志望するようになったんですよ。
ーはー。それは信念ですね。でも何故コサックダンスを踊り出す事になったんですか。
ーいい質問ですね。実は高校の時の体育のダンスの授業をきっかけに踊りた出したんです。3年生の最終学期の体育で何をするか選べたんですが、サッカーとか卓球とか無難なやつがあったのに、クラスの友達3人を誘って敢えてダンスを選択したんですよね。
ーそこでコサックダンスを選択したんですね。
ーはい。というのも、同じ授業をとっていた生徒が他に女の子しかいなくて、彼女らがいかにも女子高生みたいな感じで、キラキラしてて、イケイケで、KPOPのコピーダンスをするみたいだったんです。その頃の僕はイケイケ高校生が嫌いだったので、信念のダンスによってそれらに対抗しようとしたんです。
ーそれがコサックダンスであったと。
ーその通りです。今思うとなかなか壮絶な最終学期でしたね。
ーそうですね笑。それで何か発表会とかはあったんですか。
ーありました。最後の授業に、僕の率いていたコサック団含む3グループによるダンス発表会がありました。そして僕は絶対にトリがよかったんですよね。KPOP系に先をいかれるとなんだか僕たちのパフォーマンスが薄れてしまうような気がしたんです。牛乳を入れたシェイカーにそれを飲みほした後、オレジューをいるみたいな感じです。
ーはー。
ーそして発表会当日、何故かダンスの授業をしていた柔道場に、他のスポーツを選択している連中も押しかけてきたんです。多分先生に無理を言って授業中に見に来たんです。
ーそれはコサック団のパフォーマンスを見るためですよね?
ーそんなわけ無いでしょ。他ならぬ、僕たちに選考してダンスするKPOP系キラキラ女子高生を見るためにですよ。僕たちを見る為に押しかけた人など一人もいないですよ、きっと。
ーそれでどうだったんですか。
ー僕らの前の2グループは予想通りのキレキレのキラキラのダンスをして、オーディエンスは大盛り上がりです。何の変哲もない、無難なパフォーマンスでした。そしてとうとう僕は、その雰囲気をこの後、破壊できる喜びに手を震わせながら、ユーチューブで取ってきた「ソ連時代の革命的ダンス」という動画のスピーカーから直接取ったボロボロの音源を音量も何も考えず、爆音で柔道場に流しました。その時、「終わったな」ってなりましたね笑。
ーそれは信念ですね。
ーはい。そしてダンスが始まりました。仲間が順に踊りだし、曲がどんどんサビに近づいていきます。サビでは美しい音楽の中で僕がソロで30秒間ほど、あのTHE・コサックダンスっていう動きを続けるという筋書きでした。
ー大トリですね。
ーはい。「振り付けも音楽も大ちゃんが全部用意してくれたし。最後は大ちゃんに締めてほしい」そう同朋から言われたんです。
ーそして信念のラストスパートはどうでしたか。
ー非俗性を極めた瞬間でした。発表会のコンテクストを公然と破壊し、聴衆皆を失望させることができました。ロシアという深淵で広大な観念を身にまとって。あれは生涯死ぬまで、絶対に忘れないでしょうね。あの瞬間に自分の人生が決まったとさえ思ったんですよ。
ーそうなんですか。でもなぜ。
ー僕はコサックダンスでボート部に入部したから。
ーえ