民営化について~Vol.1 | 大阪メトロの経営をきちんと考える

大阪メトロの経営をきちんと考える

大阪市の交通、その中でも民営化された大阪メトロについて考えていきます

民営化について

2018年4月に大阪市交通局はOsaka Metroとなり、公営交通事業初の民営化を果たしました。

 

鉄道事業において、国鉄や帝都高速度交通営団に続き公営交通事業の民営化が行われたのは、歴史的な要請に基づくものだと考えており、その成否については後世の人々が歴史的事実として判断するのだろうと思いますが、私自身は民営化が必ずしも最良の選択肢ではないと思ってきました。

 

某大学の教授は、当初は 「経営が危ういから民営化するのだ」 と言っていたところが、交通局の収支が黒字になったとたん 「経営が良好であるから民営化するのだ」 と論理を180度転換していました。民営化すべきかどうかは、その程度の発想にもとづいて判断されていたのではないかと推察されます。

 

鉄道の公共性に鑑みれば、道路や港湾、航空と同じようにインフラは公的主体が整備・保有し、営業に長けた民間が経営をするという、いわゆる上下分離という方式が最適な役割分担ではないかと思いますが、鉄道事業では上物(運転や駅でのサービス等)及び下物(土木施設や電気施設等のインフラ)を担う組織同士が密接に関連しており、その調整を図ることが困難であるために上下分離は好ましくないとの意見もあります。また、殆どの日本の民間鉄道会社は過去からインフラも保有して上下一体で経営をしてきた歴史的経過から見て、お役所から口出しされないような上下一体の財産保有による経営が望ましいとされてきたとも考えられます。

 

民営化の本意は、公的機関が有してきた鉄道やバスの公共性や信頼性を維持しつつ、民間の経営における効率的な運営により、お客様や沿線の市民、株主や社員などのステークホルダーに対して、サービスの向上や利益、繁栄などを提供することだと思います。

 

地下鉄の乗務員や駅員、バスの運転手、施設や車両の保守を担う技術担当職員が安全に運行する責務を負うというこれまでの業務は民営化されても何一つ変わりません。民営化によって変わるべきは経営者となる組織の幹部であり、マネジメント層である管理職であり、加えて鉄道やバス部門を裏方でサポートするバックヤードと呼ばれる一般管理部門の事務担当社員である契約や調達、人事、経理、総務です。

民営化されてもうすでに6年間が過ぎてしまいましたが、果たして上記の経営者や管理職、バックヤードを担当する社員が望ましい対応ができているでしょうか。

 

大阪市交通局が民営化されてからの6年について振り返りつつ、大阪メトロの経営についてきちんと考えていきたいと思います。