2022年9月に自らの人生を終わらせた、ジャン=リュック・ゴダールの遺作となった、わずか20分の短編映画。サンローランが設立した映画制作会社によって製作されたという。

 その映画のために地下鉄に乗り映画館に足を運ぶのは、私の中できっちりとゴダールを眠らせたい思いからだ。どうせ、爺さん、手書きのメモと、ギトギトの映像、あるいは絵なんかのコラージュなんのだろうな、と思いながら観てみると、まさにその通り。

 たかだか40数枚のコラージュといってもキャノンのインクジェット写真用紙の裏に貼り付けられた企画メモのような紙の複写に少しばかりの、本人の話し声、あるいは「アワーミュージック」の女性の画面が数カット入っているだけ。その中にはメモもない白紙も数枚含まれる。

 キーワードは小説「カルロッタ」という言葉が、構成のメモの中に登場すること。誰かがメモからゴダールのやりたかったことを再現すれば観たいけれどねえ。これだけじゃね。という感じかも知れない。

 ただ、フランス語が母国語の観客には、企画メモの中の、走り書きを解読する楽しみもあるのかもと思うと、それも新しい映画なのだろう。

 そして、この理解しがたい映画の後に、今一度「アワーミュージック」という映画を追憶すると、何かが繋がるような気もするのだが・・・単に私の願いだけかも知れない。

 撮影と編集は「さらば愛の言葉よ」のファブリス・アラーニョ。勇気を持って言おう、王様は裸だ。

 2024年2月公開。