女兄弟にはさまれたジャックは、弟の誕生を喜んだが、その弟は家族にとって特別な子どもだった。つきまとうダウン症の弟を可愛いと思いながらもうとましく思うジャック。そのジャックは進学する際、地元の村から街の高校に通うことになる。開放感のある高校生活で好きな女の子ができる。その子の前で彼は「弟は死んでいない」と嘘をついてしまう。やがて、その嘘は、家族や友だち、さらには町全体をも巻き込んで大騒動へと発展してしまうというもの。

 映画のテイストは観やすい一般作で、音楽も多くアップテンポで、PG12ながら、中・高生世代にも退屈することなく、次々と問題を提起していく構造だ。作り手の分ってほしい想いがいっぱいだ。

 映画が生れた経過は、イタリアの高校生ジャコモ・マッツァリオールがダウン症の弟ジョーを主人公に据えて一緒に撮影した5分間のYouTube動画「ザ・シンプル・インタビュー」が評判を呼び、動画から生まれたベストセラー小説を映画化したもの。原作もジャコモ・マッツァリオール自身だ。

 2019年製作の本作、監督は長編第一作となるステファノ・チパーニ。兄のジャックをフランチェスコ・ゲギが演じ、弟ジョーを実際にダウン症でもあるロレンツォ・シストが演じた。イタリア・スペイン合作とあって、「ラ・メゾン」にも出演していたロッシ・デ・パルマや「泣いたり笑ったり」のアレッサンドロ・ガスマンなどが、やや大芝居ながらもコミカルな味を出している。

 先ほど書いたように映画としては、目新しさはないが、伝えたい想いには感動する。やはり原作者がダウン症の弟と向き合い続けた経験からの小説であり、実感あるセリフもあり、ジャックが語る弟のことは、辛口映画ファンも心動かされるだろう。

 さて、ダウン症を扱った映画も多いが、「チョコレートドーナッツ」や「わたしはダフネ」などがある。ダウン症候群は21番目の染色体が1本多く3本あり、これが原因の疾患と言われていて、どの家族にも起こりうること。正しく向き合うことは大切だ。

 原案の動画「ザ・シンプル・インタビュー」のURLを貼り付けておくのでご鑑賞あれ。

https://www.youtube.com/watch?v=pzuW4lWxIgg

 2024年1月公開。