いやあ、御歳90歳を越えた、クリント・イーストウッドが監督・製作・主演の作品。「お元気で良かったです」とある種感動。

 ドラマの発端は、元ロデオスターのマイクが、事故で落ちぶれ、何もやる気力もない老人となっているが、ある少年をメキシコから連れ戻す旅に出ることから始まる。その少年ラフォを探し出し、テキサスへ連れて帰るミッションだ。

 もちろん、我らがダーティハリーであり「運び屋」のクリント・イーストウッドが主演だから、それなりにうまくいくのだが、あっ、ご覧になっていない人は「マッチョ」は老いたとはいえ強そうなマイクだと思うだろうが、そうではない。家に帰らぬストリートの不良少年ラフォの賭け闘鶏用の雄鶏の名前だ。

 で、旅の最中に、いくつかのハラハラする場面にも出くわすが、やはり、愛を知らない少年の悲しさと、すべてを失い、老いるしかない男の悲しみが、ナイーブに交差するあたりが見どころとなる。

 さすがにイーストウッドも歳をとった。テキサスに戻る前に乗馬を教える場面では、それなりにうまく乗馬をこなしているが、荒馬に乗るシーンは、やはりカット割りされていた。でもそれでいい。

 また、メキシコで出会う家族も暖かく、マイクとラフォの心を温かくしてくれる。馬だけではなく動物にくわしいマイクのもとに、村人たちが、動物を診せに来るあたり、ユーモアもあり楽しめる。また、マイクはジイサンなのだが、孫がいるメキシコ人女性と恋に落ちたりもする。

 公式HPに劇中のセリフが掲載されている。「人は自分をマッチョに見せたがる。すべての答えを知っている気になるが、老いと共に無知な自分を知る」はい、その通りです。しかし、何故だか、元気にしてくれる映画だ。「コケコッコー」と叫びたくなる。そう「クライ・マッチョ」なのだ。どうです、観たくなったでしょ。

 本作はイーストウッドにとって、監督50年目、40作目の映画だという。「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」2度のアカデミー作品賞・監督賞を受賞しているレジェンドだ。だからこそ、この作品が最後にならないことを祈りたい。

 2022年1月公開。