第29回東京国際映画祭で東京グランプリに輝いた「ブルーム・オヴ・イエスタディ」。

 この映画は、ホロコーストのイベントを企画するドイツ人研究者が、担当を外され、納得のいかない彼は、フランス人インターン女性と独自に準備を続けるが、やがて意外な事実に行き当たる。というもの。しかも男は、ナチズムの加害者の孫。フランス人インターンは被害者の孫、そう書くと重い内容だが、この映画はアップテンポなコメディで仕上げられている。

 脚本・監督は『4分間のピアニスト』(06)のクリス・クラウス。ホロコーストの記録文書を探すなかで、被害者・加害者の孫世代が、楽しそうに一緒に過ごしていることに気が付いたことが作品の動機だという。そして、映画のラストでは「次世代への希望」を紡むいだという。私たちは歴史の過ちの中で憎しむのではなく、正しい理解と和解に対する希望を持つべきだ。(私の意見)

 ヒロインのザジ役に「午後8時の訪問者」のアデル・エネル。いささかキレチャラが大袈裟にも感じるが、注目に値する俳優だ。

 また、二人がラスト近くに訪れるラトビアのリガのシーンは胸に残る映画体験だ。監督のちょっとした演出も巧みだ。ドイツ=オーストリア合作映画。2017年9月公開。