究極の自撮りムービーが個人を越え、大いなる思いに実を結ぶ瞬間が垣間見られる映画。元アメリカンフットボールのスター選手が、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を宣告されたことから、これから生まれてくる子どもに、自分の姿や声、思いを残そうと自撮りをはじめることからこの映画はスタートする。ALSはやがて自発呼吸すらできなくなる難病。発病後の生存は1年から5年といわれているらしい。

 彼の自分を残す行為は、ごく自然なことだ。しかし、元々スター選手であったこともあり、彼の好むと好まざるにかかわらず社会性を帯びてくる。

 主人公スティーブ・グリーソンの父親との確執、苦楽を共にする奥様とのこと。そういったことも他者のカメラで明らかになってくる。自撮りから始まった映画はクレイ・トゥイールという監督を得て、客観性の中で、よりスティーブの苦悩と勇気ある選択を見せつけていく。なぜここまで見せるのか。息子のために撮り始めた映画ではないのか?そういぶかる人もいるかもしれない。ただ、客観性を持ち込み映画として公開することが、同じ難病で苦しむ人への希望ともなりうるし、ALSへの理解や声援も増えるだろう。何より、家族にお金を残すことも大切なことなのだ。

 重い内容ですが、ぜひ。2017年8月公開。