この映画は、脳性まひで、言葉と歩行に不自由な19歳のライラの物語。障害があっても、恋がしたい、キス?いやいやもっと、男の人とも、女の人とも愛し合いたい。試したい。そんな素直な気持ちがライラの笑顔の陰に消え隠れする。綺麗ごとじゃなく、嘘もつく。計算もする。そんな姿をとらえた演技と演出。それが、この映画を輝かせている。

 ライラを演じるのは、インド育ちのカルキ・コーチリン(仏)。イ・チャンドン監督の「オアシス」でのムン・ソリと比較してしまうが、両者互角の演技力。(僕は、かわいいからカルキかな)

 映画の序盤、ライラが作詞した曲を、「障害があるのにすごい」と評価して、ライラを落ち込ませる大学関係者などがいて、単純で図式過ぎると思ったが、母と娘の世界に入ると、優れた脚本力を発揮し、じわりじわりと感動に導いていく。

関係あるかないかは知らないが、監督のジョナリ・ボースには実際に障害を持つ従妹がいて、さらに17歳の自分の息子を事故で無くしている。多くの想いがこの映画を作るエネルギーになっているらしい。共同監督、ニレーシュ・マニヤル。

性を知り愛憎を知ったエレガントなレディは、手が不自由でカクテルグラスを持てなかったら、蓋つきコップでマルガリータを楽しもう。それが人生。

この映画の原題は“Margarita, with a Straw ”2015年10月公開。ぜひ