面会交流ってシンプルにいうと、「親と子が会う」だけですから、法的に何も難しい話はないようにも思えます。

 

 

財産分与だとか養育費・婚姻費用みたいに、計算をする必要もないわけです。

 

 

そういうこともあってか、当事者だけで話し合って、安易に面会交流の合意をしておられる方が結構いるのではないかと思われます。

 

 

ですが、安易な合意はリスキーだという意識をぜひ持っていただきたいと思います。

 

 

お金の話であれば、払ってしまえば(受け取ってしまえば)、それで終わりですが、面会交流は1回だけやって終わりというわけではなく、離婚後も続きます。

 

 

そのため、いい加減な合意をしてしまえば、当事者あるいは子どもの負担が長年にわたって続いてしまうことになりかねません。

 

 

その一例を挙げると、同居親234人を対象に行ったあるアンケート調査において、「面会交流が負担と感じましたか。負担と感じた理由を教えて下さい。」という質問をしたところ、78.6%の人が負担と感じたと回答し、その理由の1位は「別居親の連絡自体が負担」で、3位は「スケジュールを合わせるのが大変」という回答となりました。

 

 

もしスケジュール調整などの当事者間の連絡を原則不要とする方法があれば、この負担はなくなるはずです。

 

 

では、そのような方法があるのかというと、あります。

 

 

このような方法があることは弁護士であれば誰でも知っているはずですが、おそらく一般の方は知らずに安易に「月〇回程度面会交流をしましょう」的な簡単な合意をしてしまったがゆえに、このような負担が生じてしまっているのではないかと思います。

 

 

そこで、今回は面会交流の合意前にしてはいけないNG行動を5つピックアップして紹介したいと思います。

 

 

 

① 弁護士に相談しない

冒頭の例で述べたとおり、知識がないがゆえに安易な合意をして、負担を増やしてしまっているケースがあります。

 

 

これは非常にもったいないと思います。

 

 

私は、「子どもよし・同居親よし・別居親よし」の三方よしの面会交流が理想だと思っているのですが、そのためにはやはり一定の知識が必要です。

 

 

そのため、できる限り弁護士に相談していただきたいと思います。

 

 

インターネットで検索だけして済ませたいという気持ちは分かるのですが、ネット上の情報は玉石混淆ですし、あなたの事案に合った内容かどうかもわかりません。

 

 

ですから、ご自身のケースに合ったアドバイスをもらうために、ぜひ弁護士に一度相談をしてみてください。

 

 

当事者間で揉めている事項がある場合に弁護士に相談すれば、両当事者の意見を踏まえた対案をアドバイスしてもらえるかもしれませんし、裁判所を使った方がいいのか、むしろ使わない方がいいのかといったアドバイスも受けられるはずです。

 

 

また、手間味噌で恐縮ですが、私が書いた本「弁護士・臨床心理士の両視点にみる面会交流-当事者心理と実務のポイント-」の第4章と付録の条項例集をお読みいただければ、面会交流には様々な方法があることや、どのような点に注意して合意をして、どのような内容の条項例を作成すればいいのかがお分かりいただけると思います(冒頭に挙げたアンケートの詳細についても記載しています)。

 

 

専門書ということもあり、本の値段はお高めですが、1回の法律相談の料金と同程度で(多くの事務所は30分5500円程度のはず?)、30分の法律相談で得られる知識以上のものは詰め込んでいると自負しております。

 

 

ちなみに、弁護士以外の人がお金をとって離婚などの法律相談をしていることがあるようですが、これは「非弁行為」といって、法律で禁じられています(違反した場合は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます(弁護士法77条3号))。

 

 

誰に相談するのかという点はよくよく考えていただければと思います。

 

 

 

② 一方当事者に言われるままに合意する

早く離婚したい一心で、よく考えずに、一方当事者から提示された離婚協議書にサインしてしまうことがあります。

 

 

しかし、冒頭にも述べたとおり、面会交流は離婚後も影響を持つものですから、安易な合意はリスキーな面があります。

 

 

少しでもこの内容でいいのだろうかという疑問を持たれた場合は、安易にサインせずに、前述のとおり弁護士に相談していただきたいと思います。

 


離婚だけ先に成立させて、面会交流の協議はじっくりするという方法もありますから、不本意なまま慌てて合意することは注意していただきたいと思います。

 

 

③ 書面に残さない

口約束でも契約は成立しますから、書面に残すことなく面会交流の合意をすることも法的には問題ありません。

 

 

ですが、離婚後に一方当事者からそんな約束はしていないと言われてしまう可能性がありますし、当事者間で細かい認識が違うということも往々にしてあるため、口約束は非常にリスキーです。

 

 

こと面会交流に関しては、面会交流の合意だけでA4用紙で2~3枚(場合によってはそれ以上)になることもあるほど、事細かな取り決めをすることがあります。

 

 

このように詳細な取り決めをするのは、ひとえに離婚後のトラブルを避けるためですが、詳細な取り決めを口頭ですることはおよそ不可能です。

 

 

たとえ頻度と時間だけを決めるといったシンプルな合意であっても、当事者の合意内容を明確にし、後々トラブルにならないように、書面に残しておくことをお勧めします。

 

 

 

④ 子どもに決めさせる

面会交流は、子どもを中心に考えるべきですから、別居親・同居親の意見だけでなく、時には子どもの意見を聞くこともあります。

 

 

裁判所でも、調査官調査といって、子どもから色々な話を聞く手続があります。

 

 

ですが、「子どもの意見を聞く」のと「子どもに決めさせる」は異なります。

 

 

一般に、面会交流は、あくまで親の責任で解決しなければならないと考えられています。

 

 

子どもに面会交流をするかどうかや、その内容を決めさせようとすると、子どもは自分の意見次第で、お父さんあるいはお母さんを裏切ってしまうのではないかという思いを抱くことがあり、精神的に負担をかけてしまうおそれがあります(このような心情を「忠誠葛藤」といいます。)。

 

 

子どもに対して「あなたが決めなさい」と言ってしまうのは、非常に酷なことを強いている可能性がありますから、できる限り控えるべきです。

 

 

子どもの意見は聞いたとしても、最終的に決めるのは親という発想で話し合いをしていただければと思います(子どもの年齢が上がるにつれて、子どもの意見の比重が大きくなるという側面はあります)。

 

 

⑤ 一度も練習することなく合意する

子どもの年齢が幼い時期に別居したなどの理由で、子どもが別居親のことを「お父さん(あるいはお母さん)」という認識を十分に持てていない事案や、同居中を含めこれまで子どもと別居親だけで遊びに行ったことがないような事案において、一度もお試しの面会交流をすることなく、合意してしまうのはリスクがあります。

 

 

というのも、合意後にいざ面会交流をしてみたところ、うまくいかない可能性があるためです。

 

 

もしそうなってしまうと、合意内容は絵に描いた餅になりかねません。

 

 

その点、合意前にお試しの面会交流をしていれば、その際にもしうまくいかない点があったとしても、その点を踏まえて合意内容を決めればよいということになります。

 

 

また、実際に実施してみることで、たとえば実施時間はもう少し長い方が子どもが楽しめるんじゃないかとか、反対にもう少し短い方が子どもが疲れずに楽しめるんじゃないかといったことに気付く場合もあります。



そのほかにも当事者間で取り決めておいた方がよい事柄が見つかることもあります。

 

 

離婚するまでは絶対に面会交流はさせないけど、離婚した後は面会交流しても構わないというケースを目にすることがありますが、せっかくの合意が無駄になってしまい、再度の話し合いや場合によっては面会交流調停をしなければならなくなるというのは非常にもったいないと思います。

 

 

何より、結果的にお互いに余分な労力を割かなければならなくなってしまいます。

 

 

遅かれ早かれ離婚後に面会交流をするのであれば、離婚前に面会交流の練習をしてみてもよいのではないでしょうか。

 

 

以上、面会交流の合意前のNG行動5選でした。

 

 

離婚後も仲良しの元夫婦で、面会交流に関するやり取りも全く苦ではないとか、自由に面会交流してオッケーというような場合は、このようなことを気にする必要はないかもしれませんが、多くのケースはそうではないはずです。

 

 

この記事が、面会交流をどのようにすればいいか悩んでいる方のお役に立ちましたら幸いです。

 

 

 

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