法律相談の中で、「こんな理由では離婚できないですよね?」という質問をされることがあります。

 

 

このような質問の背景には、明確かつ強い離婚理由がないと離婚できないという思い込みがあるのではないかと思います。

 

 

中には、専門家と称する人に相談したところ、「そんな理由では離婚できない」と言われたという方もいます。

 

 

では本当に離婚理由がないと離婚できないのでしょうか。

 

 

結論から言うと、大半のケースでは離婚理由なんてなんだっていいし、何なら明確な理由がなくても離婚できます。

 

 

つまり、明確な離婚理由がないと離婚できないというのは基本的には間違いということになります。

 

 

その理由は次のとおりです、

 

 

離婚の方法は大きく分けると、①協議離婚と②裁判所を使った離婚の2種類がありますが、協議離婚が全体の約9割といわれています。

 

 

協議離婚ということは、理由は何であれ互いに離婚することに同意したということになります。

 

 

そして、協議離婚をするうえで、双方に離婚意思さえあれば、離婚理由は問題になりません。

 

 

不倫やDVのような大きな出来事がなくとも、とにかく嫌いでも、生理的に受け付けないでも、やることなすこと癪に触るでも何でもよくて、互いに離婚するという点においては異存がないからこそ離婚届に署名押印したわけですよね。

 

 

なので、全離婚の約9割に当たる協議離婚では離婚理由なんていらないということになります。

 

 

次に、協議をしてみたけど、一方当事者が離婚を拒否したとか離婚条件で折り合いがつかなかったという場合は、協議離婚ができませんので、②裁判所を使った離婚というステップに移ることになります(実務的には、協議離婚を試さずにいきなり裁判所を使うケースもありますが)。

 

 

裁判所を使った離婚の場合、調停→訴訟という流れを経ることになります。

 

 

調停というのは裁判所での話し合いですが、第三者を間に挟むことで、協議離婚ができなかったケースでも、調停では離婚が成立するということもあります。

 

 

また、当初は離婚を拒否していた方であっても、時間の経過とともに調停の途中で離婚に応じるという気持ちになることも少なくありません。

 

 

ということで、調停で離婚が成立することも実務上は結構あるのですが、その割合は全離婚のうち約9%といわれています。

 

 

先ほど述べたように、調停というのは裁判所での話し合いですから、調停委員や裁判官が離婚を命じるというようなことはなく、互いに離婚に同意しなければ離婚は成立しません。

 

 

ということは、調停離婚においても明確な離婚理由があろうがなかろうが、お互いが離婚に応じれば離婚はできるというわけです。

 

 

最後に、調停でも離婚できない場合には裁判(訴訟)をすることになります。

 

 

どういう場合に裁判になるかというと、一方当事者が頑なに離婚を拒否しているケースや、調停でも離婚条件で折り合いがつかなかったようなケースです。

 

 

まず、後者の場合は、離婚条件で折り合いがつかないということなので、反対にいうと離婚することには互いに異存ないということです。

 

 

離婚条件を裁判所に決めてもらうために訴訟をしているわけですから、離婚理由はさして問題になりません。

 

 

また、裁判になったとしても、和解という形で離婚が成立することもよくあります。

 

 

裁判上の和解の場合も、渋々であったとしても互いに納得した上で離婚しているわけですから、離婚理由があるかどうかという点について裁判官の結論は出ないままに離婚することになります。

 

 

つまり、裁判上の離婚でも離婚理由があるかどうかが真正面から問題になるわけではありません。

 

 

 

ということは、離婚理由があるかどうか、厳密に言うと民法770条1項1号~5号の事由があるかどうかが真に問題となるのは、協議や調停を経ても頑なに一方当事者が離婚を拒否し続けたケースで、裁判上の和解も出来なかったというケースに限られるということになります。

 

 

しかも、別居期間がある程度長くなれば、離婚が認められる可能性は高まります。

 

 

そうなれば、あなたが「離婚したいと考える理由」や、相手方配偶者が「離婚したくないと考える理由」という主観的な事情が何であれ、「一定期間の別居」という客観的な事実により離婚が認められることになります(有責配偶者からの離婚請求の場合はそう簡単ではありませんが)。

 

 

 

ここまで見ていただくとお分かりだと思いますが、大半のケースは裁判までならずに離婚が成立しますし、裁判になったとしても離婚理由の有無が問題にならない場合も多々あります。

 

 

弁護士は、万が一裁判にまでなった場合を見据えて、法律相談での回答を行うのが通常ですが、「明確な離婚理由がないから離婚はできない。諦めて」などと回答することはまずないと思います(とはいえ、離婚するかしないかはご本人に決めてもらいますから、弁護士がどちらかの結論を勧めたり、ましてや弁護士が決めることは絶対にありません)。

 

 

ということで、離婚したいけど、明確な離婚理由がないから諦めないといけないなんて思っている方がおられたら、それは誤解ですから、まずは弁護士に法律相談することをおすすめしますひらめき電球

 

 

 

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