はじめに
臨床心理士試験の1次試験では、マークシートと論述の2種類の試験が行われます。
しかし、1次試験の合否はマークシートの点数のみで判断されます。
つまり、マークシートの点数が悪ければ、どれだけ論述試験の内容が良くても、合格することはできないということです。
じゃあ論述試験は何のために実施するのかというと、2次試験(面接試験)の結果とあわせて最終合格を決める際に考慮するためということになっています。
まとめると、1次試験はマークシートの結果のみで合否を判定し、最終合格は1次試験(マークシートと論述)と2次試験(面接)を全部合わせて判定しますよということですね。
ただ、この試験の難しいところは、マークシート、論述、面接の各試験が最終合格に占める配点の割合が公表されていないというところです。
そんなブラックボックス感があることから、論述試験はそもそも読まれないとか、面接の点数が悪い人だけ読まれるとか、字数さえ守っていればいいとか・・・いろいろな都市伝説的なウワサが受験生の間で流れているわけです。
そのためか論述試験の対策はろくにせずに試験に挑む受験生もいるようです。
とはいえ、日本臨床心理士資格認定協会が公式に「資格審査の最終的な合格は、これら3種類の試験方式の結果を総合的に判定し、決定されます。」と言っている以上、根も葉もないウワサに流されない方がよいと個人的には考えています。
そこで、今回は論述試験の対策について書いてみたいと思います。
マークシート試験と論述試験の勉強の比重をどうするか?
冒頭に書いたように、1次試験を突破できるかどうかはマークシートの結果のみで決まりますし、論述試験の配点もわからないこともあって、おのずと論述の勉強は後回しになりがちです。
これは受験生心理として致し方ないことですし、とにかく1次試験を突破することが重要ですから、戦略的にもマークシートの勉強を中心に据えるというのは間違っていないと思います。
ただ、あまり対策をせずに論述試験に臨むのは危険ですし、精神衛生上もよろしくないと思います。
では、どの程度勉強したらいいかというと・・・
あくまで私個人の意見ですが、マークシート対策と論述試験対策の勉強の比重は、大学受験や資格試験などで論述式の試験を過去に多数経験していたり、文章を書くことが得意な人であれば、9:1くらいでいいんじゃないかなと思います。
反対に、あまり手書きで文章を書く試験に慣れていないという人の場合は8:2とか7:3くらいの比重でもいいんじゃないでしょうか。
ただ、比重を議論してもあまり意味はなくて、重要なのは勉強の絶対量です。
トータル100時間しか勉強しなかった人が7:3の割合であれば、30時間論述試験の勉強をしたことになりますが、1000時間勉強した人であれば9:1の割合でも100時間論述試験の勉強をしたことになり、後者の人の方が論述試験の勉強時間は多くなるわけです。
そのため、勉強の絶対量が確保されているということは当然の前提として、その上でどの程度のウエイトで論述試験対策をするのかという参考程度に考えていただければと思います。
ちなみに、もし試験の1~2か月前の時点でも十分な勉強ができていない人であれば、比重は99:1くらいにして、マークシート対策に全集中して、論述試験はさらっと過去問を見ておくぐらいに留めるほかないと思います。
マークシートで点数が取れなければ元も子もありませんので。
論述試験対策をいつ始めるか?
私個人としては、論述試験の対策は本番の3~4か月前くらいに開始すればいいと考えています。
以前の記事で、できるだけ早く対策をした方がいいということを書きましたが、これは主にマークシート対策のことで、論述試験対策はそんなに早くやらなくていいと思います。
つまり、早めに勉強を開始して、マークシート対策をまずはある程度固めてしまってから、論述対策を行うという戦略がよいと思います。
どのような勉強をすればいいか?
論述試験対策もマークシートと同じく過去問を中心に勉強するのがベストだと思います。
論述試験は過去問が公表されていませんが、市販のテキストには、ほぼほぼ過去問と同じ内容が掲載されています。
私の場合は、平成22年から直近の令和2年までの論述試験すべてについて、Wordで解答を作成しました。
私は時間短縮のためにWordで解答を作りましたが、これは司法試験受験の際に手書きで答案を書くということに十分慣れていたからです。
手書きで答案を書くことに慣れていない方の場合は、何通かは手書きで答案を書いてみるとよいと思います。
それと、漫然と解答を作ってもあまり意味がなくて、何のために過去問の解答を作成するのかということも意識することが重要です。
近年の臨床心理士試験の論述試験では「あなたの経験をふまえて、〇〇について論じなさい」みたいな問いになっていたはずです。
つまり、抽象論だけでなく、具体論も書くことが求められているわけです。
そして、抽象論、具体論ともに事前準備をすることが可能です。
この事前準備こそが、論述試験の対策です。
まず抽象論については、異なる問題でも同じようなことを書くことができます。
たとえば、「臨床心理士の専門業務」に関する記述(①臨床心理査定、②臨床心理面接、③臨床心理的地域援助、④上記①~③に関する調査・研究というやつです)なんて、ほぼどんな問題であっても書くことができますし、ここから論を進めると書きやすい問題もあります。
ですから、この臨床心理士の専門業務に関する記述をあらかじめコンパクトにまとめておいて、それを覚えてしまいます。
ちなみに、こういったあらかじめ用意した抽象論のことを司法試験業界では「論証パターン」などというのですが(批判の対象になることもありますが)、臨床心理士試験でも事前に準備できる抽象論はありますので、パターン化しておくといいと思います。
どういった抽象論を事前に準備しておいて、頭に入れておくとよいのかということを知るために過去問の解答を作成するということが重要です。
次に、具体論の方ですね。
これについても、事前に準備可能です。
「あなたの経験を踏まえて」という問いが出される可能性が高いわけですが、試験当日に問題文を見てから自分自身のこれまでの経験を振り返って思い出しているようでは、あまりに無駄が多いと思いますし、下手をすると時間内に書き終わらない可能性もあります。
ですから、あらかじめこういう方向性の問題が出た場合には、この経験を書こうというパターンをいくつか用意しておくとよいと思います。
私の場合も、大学院時代の実習のことなど4〜5個くらいの経験をコンパクトに書けるように用意しておきました。
逆に言うと、過去問を全て解いてみた結果、たった4〜5個の経験を使いまわせば、ほぼ全ての問題に対応できるということがわかったわけです。
具体論すら汎用性のある形で準備可能ということですね。
このような準備をすることで、試験中に思い出す作業をする必要がなくなりますし、ある程度書く内容を事前に決めておくので、分量・内容ともに適切なものを答案用紙に吐き出しやすくなります。
また、試験問題によっては自分自身で経験していない事柄が問われることもありますので、そういう場合を想定して、試験本番までに「こちらから経験をしにいく」というのもありです。
私の場合は通信課程ということもあり、大学院時代にケースを持つことがなかったので、スーパービジョンを受けたこともありませんでした。
そこで、もし「スーパービジョンについて」的な問題が出されてしまうと、ちょっと具体論を書きにくいなと考えて、試験前に数回スーパービジョンを受けておきました(正確にはコンサルテーションだったと思いますが)。
すると、本番では見事にスーパービジョンに関して問われたので、対策したことをうまく活かすことができたわけです。
ということで、過去問の演習を通じて、抽象論、具体論ともに事前の十分な準備をしたうえで試験本番に臨めるとベストだと思います。
ただ、注意が必要なのは、事前に準備した場合、どうしてもそれを本番で書きたくなるのですが、問題によっては必ずそれを吐き出さなければならないというわけではありませんし、むしろ的外れなことを書いてしまうとリスキーです。
ですから、事前準備をすることは重要ですが、準備した内容をそのまま貼り付けるべき問題か、貼り付けるとしてどの程度のボリュームにするのかということは、現場で考える必要があります。
この点はくれぐれも間違わないようにしたいところです。
その他の注意点
論述試験は、指定された字数に1文字足りなくても、1文字オーバーしても不合格になります。
そのため、字数の管理はとても重要なのですが、私は答案用紙がどういう様式なのかが、本番までわかっていませんでした。
これについては、20文字×20行の用紙が3枚連なった様式でしたので、情報提供しておこうと思います。
きちんとマス目がありますから、文字数を自分で数える必要はありませんし、1200文字を超えてマス目があるというようなトラップもありませんから、解答用紙内におさめさえすれば書きすぎて失格ということもありえません。
また、記入はHBの鉛筆ですることが求められますので、手書きで答案を書く練習をするのであれば、折角ですから鉛筆で書いてみるといいと思います。
以上、論述試験について書いてきましたが、冒頭で述べたとおり、論述試験は対策が手薄になりがちなところです。
少しでも今回の記事が臨床心理士試験の受験生のお役に立てば幸いです