長引いてしまう離婚事件の続きです。
②面会交流が問題になっていて、なかなか歩み寄りができない場合
こんな場合も長引く傾向にあります。
前回の記事で書いた親権が争いになる場合と同じく、子どもが絡むと紛争が激化しがちです。
具体的なケースを見てみましょう。
妻が子どもを連れて別居が開始し、その後離婚調停と婚姻費用調停を申し立てました。
1回目の調停期日で、夫から「離婚はさておき、子どものことが心配。1日も早く子どもと会わせてほしい!」という要望が出ました。
しかし、妻は「今後、子どもには会わせるつもりはない」と言って夫からの要望を突っぱねました。
そうなると、夫側も黙ってはいられません。
即座に面会交流調停を申し立てることになります。
面会交流調停では、夫は「週1回の面会交流、それとは別に春休み・夏休み・冬休みに宿泊付きの面会交流を行う、学校行事にも参加する」と強固に主張します。
反対に妻は、夫の主張を受けてより態度を硬化させ「面会交流はさせない」と主張します。
その後、期日を何度も重ねましたが、妥協点を見出すことはできず、審判へ・・・
こんな感じです。
上記ケースのように、非監護親側が、離婚調停とは別に面会交流調停を申し立てる理由は、離婚調停が不成立になったとしても、面会交流事件が残るので、面会交流に関する話し合いは引き続き行うことができるためです。
最終的に調停で話し合いがまとまらなければ、審判という手続に持っていくことができるというのも、面会交流調停を申し立てる理由ですね。
また、面会交流調停が申し立てられると、調査官が介入するのが一般的です。
妻側、夫側、子どもそれぞれについて、調査官調査(簡単に言うと調停とは別の場面で調査官が色々な事情を聴く手続です)が行われることになります。
さらに場合によっては試行的面会交流が行われます(審判に移行してから実施されることもあります)。
ここまで見てきてお分かりのとおり、本体の離婚の話とは別に、面会交流の話だけで、調査官調査やら試行的面会交流やらを行いますので、これだけで相当の時間がかかります。
面会交流の問題を解決する前に離婚だけはサクッと成立ということになれば、ひとまず離婚だけはすることができますが、実際はなかなかそうはなりません。
つまり、面会交流事件の長期化に伴い離婚も解決まで長引いてしまうわけです。
しかも、面会交流の問題が調停で決着がつかない場合、審判という手続に進み、さらに時間がかかるということになりかねません。
ちなみに面会交流事件が審判に移行すると、離婚事件と面会交流事件は切り離されますので、裁判所に行く回数が増えたり、場合によっては弁護士費用が増えたりと当事者の負担も増えることになります。
このように、面会交流に関して歩み寄りの余地がないケースの場合、どうしても紛争が長期化し、精神的にも物理的にも負担が増えてしまう傾向にあります。
では、長期化しないようにする対策はあるのでしょうか?
あくまで個人的な意見ですが「自分の感情だけではなくて、子どもにとってどうするのが良いか」という視点をが持つようにすることだと思います。
毎週でも会いたい!
という気持ちのお父さんは少なからずおられます。
気持ちはわかります。
ですが、特に子どもが大きくなってくると部活や習い事なとで、現実的には毎週の面会交流となると子どもに負担がかかってしまうこともあります。
面会交流の頻度や時間はもちろん重要ですが、子どもの負担や監護親側の意向・負担を無視した主張に終始すると、結果的に紛争が長期化し、望む結果にならないおそれもあります。
「細い糸でも繋いでおく」
「面会交流はスモールステップを積み重ねていく」
こういった発想が重要だと思います。
月1回、数か月に1回でも子どもと会っていれば、細い糸は繋がります。
たとえ細い糸でも、繋いで子どもと良好な関係を築くことができれば、いずれは子の成長に応じて面会交流の時間や頻度に変化が出ることもあります。
スモールステップを積み重ねていくわけです。
目先の頻度や時間にばかり捉われるのではなく、将来的な視点を持てると良いと思います。
反対に、監護親側は、面会交流には子どもにとってプラスになることがあるということを知る機会を持ってもらいたいですし、子どもと非監護親の関係を断絶させてもいいのかという視点も持ってもらいたいと思います。
もちろん、面会交流を禁止・制限すべき場合もありますので、どんな場合でも面会交流をさせることが必ずしも良いことだというわけではありません。
当事者双方が「子どものため」という一点において、歩み寄ることができれば、少しでも紛争の長期化を避けることができるのではないでしょうか。
このブログでも何度か書いていますが、面会交流には唯一絶対の正解があるわけではないと思いますし、基本的には勝った負けたという概念にも馴染まないと思います。
理想論だと思われるかもしれませんが、弁護士としては子どものためにどうするのがいいのかということを考えるお手伝いができればと考えています
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