ウクライナ戦争の金融的背景(BRICS新開発銀行) | 大阪の弁護士 重次直樹のブログ

ウクライナ戦争の金融的背景(BRICS新開発銀行)

多くの場合,戦争には表向きの理由と,裏の隠された真の理由がある。真の理由は金融に関係する場合が多い。

 

イラク戦争では,フセイン大統領が石油のユーロ決済を試みたことが背景にあり,米ドルvsEUユーロの戦いだった。ユーロ加盟国は侵攻に消極的で(仏独),フレンチ・フライがフリーダム・フライになったりしたが,英国・ポーランドなどユーロ非加盟国は積極的に米国に協力した。当初は協力的だったイタリア・ポルトガル・オランダなどのユーロ加盟国は,徐々に消極的になり,通貨による色分けがはっきりした。

 

今回のウクライナ戦争は2014年2月のマイダン革命の影響が大きく,その時期にあった金融面の大事件と言えば,BRICS新開発銀行の設立が挙げられる。

●2013年3月27日 南アフリカのダーバンで開かれたBRICSサミットにおいて,BRICSの首脳たちにより設立合意

★2014.2.22 マイダン革命 → ロシアのクリミア併合(核兵器放棄・ウクライナ領土保全のブタペスト合意に違反する,という批判へのロシアの反論は,正当なウクライナ国家が違憲クーデターで消滅したというもの。クーデターによる政権移行が憲法違反だったのに対して,クリミア分離独立は憲法手続きに従っている)

●2014年7月15日 ブラジルのフォルタレザで開かれたBRICSサミットの初日,1000億ドルの資本金で設立,同時に1000億ドルにのぼる外貨準備基金を設立,欧米主導の融資制度とドル通貨の影響力に対抗するものとされる(ウィキペディア)

 

2014.2のマイダン革命は,表向きは民主革命だが,実質はヌーランドら米ネオコン主導の暴力クーデターであり,憲法違反の手続きにより米国傀儡政権が樹立された。なお,苫米地英人「日本人だけが知らない戦争論」によれば,清教徒革命(クロムウェル),フランス革命,明治維新でも,外国資本に支援されたと見られるプロの民兵(傭兵)が革命運動に潜入しており,構造は同じだと言う。

 

(戦争・革命と金融・通貨の関係について,網羅的に解説した良書)

※細かい誤記・誤りはあると思いますが,大きな枠組みの提示として,凄い本だと思います。

 

BRICS新開発銀行には,昨年,3か国の追加加盟が伝えられた(アラブ首長国連邦(UAE)、ウルグアイ、バングラデシュ)。8/31の米アフガニスタン撤退(大混乱)の6日後の報道である(加盟は2日後だった→こちら)。

 → BRICS新開発銀行、新たに3カ国が加盟へ 新華社 | 2021-09-06 07:41:10 | 編集: 陳辰

(参考記事)

BRICS、貿易円滑化とドル依存脱却のためにデジタル通貨を検討 2019.11

 

ラピッド・トライデントについては → こちら

 

今回のウクライナ戦争では,

・中国はロシアへの制裁に反対,米国の生物兵器研究についてロシアに同調

 → 「米国がウクライナで生物兵器開発」中国がロシアの主張に同調

・ブラジルもロシアに同情的

 → 「プーチン氏は平和を追求」と言ったブラジル大統領、肥料輸入に影響と制裁に否定的

・インドはロシアから原油を輸入

 → 米、インドに警告 ロシア産原油購入急増受け

・南アフリカも欧米を批判

 → 南ア大統領、NATOを非難 ウクライナの紛争「回避できた」

 

★ロシア非難の国連決議の棄権国(35):アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、バングラデシュ、ボリビア、ブルンジ、中央アフリカ、中国、コンゴ、キューバ、エル・サルバドル、赤道ギニア、インド、イラン、イラク、カザフスタン、キルギスタン、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、セネガル、南アフリカ、南スーダン、スリランカ、スーダン、タジキスタン、ウガンダ、タンザニア、ベトナム、ジンバブエ★

 

★新加盟のアラブ首長国連邦(UAE)安全保障理事会で棄権

   → ロシア非難決議にUAE棄権の衝撃~中東に広がる対米不信~【コメントライナー】

 

表向きのウクライナ・ロシア紛争の裏に,米国主導の国際金融秩序(IMF・世銀体制)に挑むBRICS新開発銀行という構図があるという解釈が正しければ,イラク戦争時と同様,今後の各国の対応は,どちらに利害関係を強く有するか,という点に沿って収束していく可能性が高い

 

(引用元)

 

 

日本はIMF・世銀体制側の国であり,BRICS新開発銀行の伸長は利益とならないから,金融面では反ロシア側に立つ国に分類されることになるだろう。イラク戦争で米国・米ドル側だったのと同じだ(EU・ユーロの伸長は利益にならない)。

 

紛争・戦争の裏にある金融的背景を覗き見ると,イラク戦争が如何に正義なき戦争であるとしても,また,ウクライナでの米ネオコンの策謀が,如何に邪悪だとしても,米国側に立つのが日本の利益・宿命かもしれない

日本人に,倫理面と利益面の葛藤が生じるのは,イラク戦争もウクライナ戦争でも,似た状況かもしれない。イラク戦争と同様,ウクライナのマイダン革命では,米国はかなり無理をした。日本でも批判が少なくない。それだけ,イラク原油のユーロ決済やBRICS新開発銀行は米国に脅威と見られていたのだろう。ヌーランドの電話やオリバーストーンのフィルムなどで,マイダン革命の実態は,かなり広まっている。一連のウクライナ紛争で,米国が倫理的・道徳的な共感を得ることは難しく,イラク戦争以上に先行きは危うい。自分たちの都合の悪い国に侵攻したり,革命を策謀したりする米英の政策は,ロシア・中国だけではなく,アラブ・アフリカ諸国からも反発を買っている。インドも冷めた目で見ているだろう。

 

それでも彼らは押し切り,プロパガンダで世界を覆おうとするだろう。多くのSNSが米国の巨大テック支配下にある。親ロシアの言論は,反ワクチン同様,主要メディアに流れず,SNSでも次々に削除されていく。

 

米英の基本政策は,ユーラシアを対立・混乱させ,紛争・戦争を長期化させて,相対的優位を確保し,戦時利得を得ることにある。

 

同じスラブ民族・正教のウクライナ人・ロシア人が挑発され犠牲になっているような形で,同じ東アジアの中国人・日本人・朝鮮人などが相互に対立させられ犠牲にならないことを,強く願う。