職業と寿命,長寿の秘訣:僧侶,彫刻家,医師,学者,弁護士は長生き | 大阪の弁護士 重次直樹のブログ

職業と寿命,長寿の秘訣:僧侶,彫刻家,医師,学者,弁護士は長生き

以前の記事で,生命保険会社のデータによれば,銀行員は定年退職後の余命が短く,弁護士は長生きと書きました。

  → 弁護士の健康と寿命(2010.7.10)

 

少し前に,「職業と寿命」という本が出版されています(2019/3/28,電子出版(KINDLE))。それによれば,確実に長命の職業は,学者,画家,彫刻家,僧侶,医師,弁護士,ほぼ確実に長命なのは,官僚,実業家,政治家,詩人・歌人・俳人,能楽師,工芸家,陶芸家,建築家,プロ野球選手短命なのは,相撲力士,歌舞伎役者,落語家です。先輩から聞いた生命保険会社のデータ通り,弁護士は長命のようです。

 

他の調査(後述)でも,彫刻家や画家は長生きですが,作家は画家よりは短命です。同じ芸術関係でも,非言語的な方が,長生きにつながるようです。「職業と寿命」の表1では,画家工芸家>映画監督>音楽家>芸能人>>作家>詩人歌人でした。ただし,森一の1980-1982の調査(対象2328名)では,歌人は弁護士,政治家に次ぐ3位です。

 

 

筆者の大野竜三氏は医師(愛知県がんセンター名誉総長)で,いろいろな職業の寿命を分析し,長寿職業者の生活習慣を参考にし,また短命の職業者を他山の石として,最晩年まで元気で長生きするにはどうするのがよいかを医学的に考察・解説し,ただ単に長生きするだけではなく,健康を保ったまま元気で長生きするための参考になれば,という趣旨で本書を記したといいます。大野氏は著名な内科医で,専門は白血病などのがんですが,白血病のほか,終末期医療,リビング・ウィルなどの書籍も上梓しています。

 

職業と寿命については,福島医科大学の森一教授らの研究が有名です。10の職業のみの分析ですが,1926-1979の調査(対象者3515名)では平均68.6歳に対して

1 宗教家 75.6歳

2 実業家 73.2歳

3 政治家 72.8歳

4 医師・医学者 71.5歳

と続いています。後述の参考サイトはこちらを採用したものと見られます。

→ 五本木クリニック

 

同じく森一教授らの研究ですが,1980~1982の調査(対象者2328名)では,調査対象業種が増えており,また,平均74.1歳に対して,

1 弁護士 77.9歳

2 政治家 77.7歳

3 歌人 77.3歳

4 宗教家 77.1歳

5 芸術家 74.1歳

です。1926-1979の調査より,平均で5.5歳寿命が伸びています。

 

どの調査でも上位に来るのが,僧侶・宗教家でした。これについて,大野氏は,理由の一つとして,最もメタボ予防に適した生活習慣を実践していることを挙げています。医師にもメタボ予防の医学的知識があり,長寿になるのは自然なことだと言います。

 

僧侶(聖職者)・医師・弁護士は,欧米で3大プロフェッションと言われ,公益性・社会貢献が求められる専門職で,独立性も高く,定年もなく,比較的自由・自立的な立場で,高齢まで頭を使って仕事をし,やりがいを感じやすい職種であることが,長生きにつながっていると考えられます。

→ プロフェッションとは

→ 医師とプロフェッショナルオートノミー

 

同様の韓国の調査では,以下のとおり,僧が断トツの1位と「職業と寿命」では紹介されています。

1 僧 79歳

2 政治家 73歳

3 芸能人 73歳

(1936年~2000年に新聞の死亡欄に掲載された2,143名, 平均71歳

 

「職業と寿命」では,職業別の寿命調査をヒントに,健康長寿の秘訣を探り,提示することが目的でした。大野氏は結論として,以下を勧めています。

1 生活習慣(がん,メタボを防ぐ。タバコ・不規則は×)

2 脂質も含めたバランス良い栄養

3 運動(骨折・怪我に注意)

4 定期検診

5 早期治療

6 出来る限り働き続ける

7 生きがいを感じる仕事を継続(仕事で無理なら,生きがいを感じる他の活動)

8 頭脳と身体を使う

9 社会とのつながりを保つ

10 面倒を見てくれる人(そのための資金)

 

なお,弁護士の場合,政治家になった弁護士は,普通の弁護士より短命だそうです。

「職業と寿命」の調査では,以下とされています。

1 法学者でもある弁護士 83.4歳

2 裁判官・検事を経て弁護士になった人 81.9歳 

3 弁護士稼業が中心 81.6歳

4 政治家としても活動した弁護士 77.4歳

(「職業と寿命」より)

 

以下のサイトにも,森一氏の調査が引用されています(10の職業のみ)。

1位 宗教家 75.6

2位 実業家 73.2

3位 政治家 72.8

4位 医師・医学者 71.5

5位 大学教授 67.7

6位 俳人 67.6

7位 歌人 66.9

8位 芸術家 64.7

9位 小説家 63.0

10位 詩人 57.7

大樹生命 →ブログ

→ 五本木クリニック

 

(大樹生命のサイトには1980-1982の調査と書いてありますが,大野氏の書籍によれば,1926-1979が正当です。※)

※少し長いですが,引用しますと,「学術論文ではないものの、福島医科大学の森一らが1926年〜1979年の間に「物故人名録」、「人名辞典」や全国紙の死亡欄に載った3, 515名の寿命と職業の関係を調査し学会で報告している。その報告集によると、全体の平均寿命が68. 6歳であったなかで、宗教家(405名)の平均寿命は75. 6歳と突出して高く第1位であり、以下、実業家(73.2歳)、政治家(72.8歳)、医師・医学者(71.5歳) と続いている。ちなみに芸術家(389名)は64.7歳と平均値以下であり、全体では8位と決して高くはない。森らは、続く1980年〜1982年の3 年間における2, 328名の調査結果も、同じ学会で報告している。これによると調査対象全体の平均死亡年齢が74. 1歳であったなかで、弁護士が77. 9歳で第1位、政治家77.7歳、歌人77.3歳と続き、宗教家(132名)は77.1歳で4位、芸術家(360名)は74.1歳で5位だった。

 すなわち、2回目の調査においては宗教家がとりわけて長命というわけではなく、芸術家は全体の平均値と同じだった。学術論文でないこと もあって、前報告との相違に関する考察は書かれていないが、後に森が書いた総説においては、第1回報告のデータがそのまま掲載されて おり、かつ700年〜1949年の1, 200年間を50年ごとに区切って平均寿命を調べると、僧侶(1, 100名)は、藩主、家臣、公家に比べて常に長命 であったと述べている」

 

私の考えでは,僧侶は,

1 呼吸を整える

2 姿勢を正す

3 心を整える

4 声を出す

5 身体を鍛える

6 精神,情動,知識を鍛える

7 人を相手に仕事をする

8 自然に触れる

といったことも実践しており,古くから伝わる「生きる知恵」を実践していることが大きいと思います。「瞑想」「座禅」には1・2・3の要素が全て入っています。もちろん,森氏の指摘するように,僧侶には食生活を含めメタボ対策に適した生活習慣があり,高齢まで頭を使う仕事を続けている,と言えるでしょう。

 

別の調査では,東京都立大学,日丸哲也氏のものをインターネットで見ることが出来ます → こちら

ここでも,群として宗教家群が1位,細目でも宣教師・神道家が1位,僧侶が2位です。

1 宗教家群  71.72才

2 事業家群   67.38才

3 芸術家群 67.21才

4 学者群(自然科学) 66.93才

5 学者群(人文,社会科学) 65.81才

6 芸能一般 65.40才

7 体育スポーツ関係 64.87才

8 文学関係群 62.20才

9 政治家群 57.72才  ★軍人,皇室を含んでいると見られます

(総平均 63.98才)

(細目 1 宣教師・神道家,2 僧侶,3 碁・棋士,4 彫刻陶芸家,5 動植物学者,6 茶華道家,7 工農学者,8 経済人,9 政治・外交家,10 医学者,11 教育心理学者,12 社会事業家, 13 医師 ,14 義太夫能楽師,15 国語国文学者,16 理数学者,17 画家,18 音楽家,19 気象・地理学者,20 儒(?)者漢学者,21 哲史学者,22 政法律学者,23 スポーツ体育,24 歌人詩人,25 蘭医儒医,26 評思想家,27 俳優,28 作家,29 武将軍人,30 皇室)

  

当たり前のことでしょうが,長生きのためには,

1 食事・栄養

2 運動,身体を鍛える

3 仕事を続ける

4 頭を使う

5 きちんと休む(睡眠を取る)

6 人や社会とのつながりを持つ(人間関係と社会貢献)

7 心身の健康を保つ

8 自然に触れる

9 バランス・メリハリ・リズム・循環を良くする,適度・適温

10 経済的に豊かで余裕を持つ

11 呼吸や姿勢を整える。綺麗な空気も大切(タバコ・排気ガス・シックハウス等は×)

12 片づける,余計なものは捨てる

13 自分に素直に生きる,楽しく生きる

14 安全・安心を確保する

といったところが大切でしょう。大野氏の提言とも共通部分が多いと思います。

 

(下表:私流マンダラチャート)  →  マンダラチャートの記事1   

 

なお,「早死にする職業ランキング」というサイトもありました。 

→ こちら

1位 大手広告代理店の営業

2位 IT企業の下請けSE

3位 チェーン飲食店店長

4位 若手官僚

5位 病棟勤務の看護師

6位 タクシー運転手

7位 LCC客室乗務員

8位 自衛官

9位 公立学校の教員

10位 トラック運転手