JR東北線踏切内で34歳男性が貨物列車にはねられ死亡 杖をついて歩いて転倒か<福島市>
まったく痛ましい事故となってしまった。
男性は踏切で転倒し、起き上がれないでいるところに貨物列車が接近。機関士は急ブレーキをかけたものの、間に合わなかった。
別の記事では杖が踏切に挟まってしまった可能性もあると報じられていた。
報道機関が推測で記事を書いていいのかという問題はあるが、これは注意喚起を促すためであり、悪意はないだろう。
今回の事故では本当に杖が踏切に挟まったかどうかは検証のしようがない。
そこで今日、まず言いたいことは、踏切に杖が挟まる現象は現実に起きているということである。
(そのことが人身事故にまで繋がった事例があるかどうかは知らないが)。
まず、踏切の構造を説明する前に理解しておかなかければならないことがある。それは車輪の構造。
(画像引用元)
車輪にはフランジという、脱線防止の縁(帽子に例えると鍔に相当する)がついている。
このため、踏切はどうしても、フランジを通過させるため、レールと路面の間にフランジを通す隙間が必要となる。
しかし、この幅が広い場合、人が足首を挟んでしまったり、ベビーカーの車輪がハマったりすることがある、
このようなアクシデント自体は昔は時々あったそうだ。
そこで、いつ頃からか鉄道会社はできるだけ、上の写真のように、レールと路面の隙間を極力、埋めて狭める努力をしている。
ただし、ローカル線はやはり、費用的にとても無理。
上の写真はまさに、今回の事故現場の踏切(福島駅南2km)をグーグルマップのストリートビューで見たものである。
事故現場の踏切も、このようにレールと踏み板の隙間が極力、詰められていることが分かった。
しかし、これはこれで新たな問題が起きることがある。
それは、杖の先にこのようなラバーを付けた場合である。
サイズによっては踏切の隙間に入ってしまい、抜こうとしても、レールに引っかかるため、抜けません。
もっとも、その場合は強く引っ張ればラバーが外れるし、また杖は抜けなくても軌道外に逃げれば難を逃れることができます。
しかし、抜こうとしてバランスを崩して転倒する恐れがありますし、杖を突いている人は転倒時に腕で受け身を取ることができず、頭を打ってしまう場合も多いのです。
このように、自力で起き上がれない人が踏切で転倒すると極めて危険な状態となることがあります。
また、さらにもう一歩進化した踏切ではベビーカーやシルバーカーの車輪が隙間に落ちないように充填材が設置されているケースがあります。
これはもちろん、良い取り組みなのですが、これはこれで「先っぽが普通の杖」が挟まりやすくなってしまうのです。
写真を見れれば一目瞭然。
https://www.rtri.or.jp/publish/rtrirep/2021/sdd6bj0000004w2m-att/202102_04.pdf
踏切の隙間を詰めると、杖の先が挟まるリスクが増すが、そもそも、杖が踏切に挟まる事自体が滅多に起きませんし、ましてや杖が挟まって人身事故になるは数十年に一度ぐらいのことでしょう。
そのため、社会全体の「公約数」で見れば、ベビーカーや手押し車への安全性が増すメリットが大きいのです。
このような幅の広い杖用ラバーを製造することを批判しませんし、踏切の改良を批判することもありません。
ただ、ラバーの装着にしても、踏切の改良にしても、良かれと思ってやったことが確率的には低いながらも、仇となることがあるものです。
不安を煽るつもりはありませんが、視覚障害でない人の場合、杖の先は隙間に挟まらないように避けますが、目が不自由な人の場合、杖で足元を探りながら歩くわけなので、杖が挟まるリスクは恐らく何十倍にもなると思います。
今回、この事故が起きたのはJR東日本管内ですが、参考までにJR東海という企業の場合は、原因者の障害の有無は一切、考慮しないで遺族に損害賠償請求してきます。
そして、支払いに応じない場合は訴訟に踏み切ってきます。これらの行為は「法律上は」まったく問題ありません。
(有名な事件)
今回の件では、JR東日本は「この場合はどうするか?」で顧問弁護士の意見を聞きつつ、今後の賠償請求の方針を何ヶ月にも渡って検討することでしょう。
JR東日本年も困るでしょう。見せしめで高額請求をしたいが、先のJR東海の大失敗の事例もありますから。
個人的には残されたご家族にとって過酷にならない寛大な対応をし、英断となることを望みます。
「法のもとには何人も平等」とは言うが、その事を基礎としつつ、巨大企業には福祉社会の建設のため、応分の社会的負担をしていただきたいと思う。
「杖が踏切に挟まることが滅多に起きない、起きても人身事故につながることが滅多に起きない」と言うなら、わざわざこういう記事を書く必要はないはずです。
しかし私の知人が「踏切に杖が挟まる」経験をしているので案外身近で起きているかも知れません。
34歳の若さでこのような不慮の事故により、生涯を閉じることになった男性のご冥福をお祈りしたい。