これは「サイゼリア」のサラダ料理に生きたアマガエルが入っていたニュース。
食品衛生+工場のお話+日本社会のありがちな話をまとめた記事。
(以下の記事から抜粋)
利用客の女性は「(生きたアマガエルが入っていた)サラダを食べた直後から胃腸の不調が続き、病院を受診したことをサイゼリヤ側に伝えたが、製造ラインをストップさせなかった。食の安全を軽視している」と憤りをあらわにしている。
(引用元)
金属片の場合は口に入れると危険。そういう意味ではアマガエル自体は異物であるものの、それほど危険性の高いものではない。
(もちろん、なにかしらの悪い菌やウィルスが体に付いていたり、寄生虫を持っていることもあるが)。
このため、製造ラインを止めることを要求するのは過剰要求との意見もある。
確かに、日本人は病的に過剰な対応を求める傾向があるから、そのような寛容なお心には敬意を表したい。
しかし、今回のケースでは寛容に済ませてしまってはいけないケースといえる。
なにしろ、サイゼリアは食の安全確保である※「HACCP」(呼び名は、ハサップ又はハセップ)の大原則(ただしケースバイケースでもあるので鉄則とまでは言えない)を無視したからである..。
※「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準
「HACCP」の観点からすると、異物混入が確認されたにもかかわらず、ラインを止めずに作業を続けたことは、まったく、不適切な判断だったと断じる他無い。
まず、リスクを適正に評価して、その後の最適な対策(危険度とフードロス低減のバランス)を決めることになる。
今回のケースでは、「カエル」は健康被害のリスクは低いものの、前述のようにゼロでもない。
精神衛生上もよくない。
カエルの脚は欠損していたわけだし、カエルは他にもいるかも知れないので、カットマシン内の材料の動線の完全点検と洗浄ぐらいは、やって然るべきだった。また、未梱包の物はラインを止めて異常以上がないか、現物確認をするべきだった。
ダンボール箱に詰めて出荷梱包してしてしまったものに関しては、※仕方がないので各店舗で入念チェックを指示すればいい。そもそも、各店舗がちゃんと検査していれば起きない事故だった。
(※開梱・確認作業をするとかえって汚染するリスクがあるため。特に細断している場合)
一部の業者にこういう「営利優先」な事をされるとHACCP制度の信頼性を下げ、そして実効性をも下げてしまうことにつながっていく。
誤解のないように繰り返しますが、あくまで「HACCP」視点で見れば「そうなる」と言っているのです。
ライン作業を止めて検査することは消費者の立場から見ても、過剰な対応に見えるとしても、食品衛生の観点で処理しないといけない。
サイゼリア側は、ただちにその場で③~⑤の「改善措置」をなんら、取らなかったのです。
コンベア式で野菜のカット後は自動的に小分けに梱包、かつ、ダンボール詰めまでする仕様であれば、止める必要など無いと言い張ることになる。
このことは、食品業者でありながら、食品業の義務である「HACCP」を無視している事を意味する。
また、工場での混入は、店舗で混入した場合よりずっと状況が悪い。サイゼリアはこれらのことをまるで自覚していません。
大規模食品加工場には管理栄養士が配置されているはずだが、この企業の場合は機能していないのだろう。
今回のサイゼリアの対応は裁縫工場の「折れた針管理の感覚」からすると、仰天するかも知れない。
行政サイドの視点で見るなら、「HACCP」(法令ではないが、それに近い。)をきちんと守ってくださいって話になるのです。
近年は消費者の職の安心・安全の意識が過剰に厳しくなる中で、「そこまでしなくていい」と、寛容な声が上がるのは微笑ましいです。
ですが、寛大で甘い処分は「HACCP」(法令ではなく性善説で運用されている)を形骸化させるきっかけになりかねません。
保健所としても、カエルが混入したことは不可抗力の面もあるので大目に見るでしょうが、それよりもむしろ、ラインを止めずに野菜の加工を続けたことを(前述の理由により)問題視することでしょう。
店舗の現場の調理員も、検品などしていないことが明らかになりました。
基本的な大事な話しですが、700店舗以上の配送する巨大ラインなので止められないと言う論理は企業の都合に過ぎません。
食品衛生上の根本論を言うと、「すぐに作業を中断し、再発防止策を取れないなら安全性を確保できないわけですから、そういう方法ではやってはいけません」となるのです。
分かりやすい理論でしょう。
こういう事は言いたくありませんが、サイゼリアのような、不適切な対応をする業者がいるせいで、厚労省はますますHACCPの運用を厳しくするように通達を発出せざるを得なくなるのです。
余計な仕事を作らないで欲しいです。
話は変わり、参考までに、数年前の和菓子屋さんでの作業現場の話をしたい。
それは小さいお団子を容器に詰める作業だが、室内には蒸し器があるため、りエアコンを最強にしても暑い。
そこで、窓を開けて熱気を逃がしつつ、エアコンを最強にし、扇風機も回す方法が一番、室温を下げられた。
当然、室内に虫が入ってくる恐れがある。
いくら小さい虫でも、肉眼ではっきり見えるから混入しても見落とすわけがない、それに次の工程でも、更に次の工程でも見つかるはず...。
と言うふうには、実はいかない。
とにかく、こういう工場(や加工場)は、スピードが最優先(零細経営の場合は特に)。
ベルトコンベアを使わない工場(特に食品加工場)であっても、通常は流れ作業(が多い)なので、異物が見えていても気が付かない。
というか、それ以前にいちいち検品などしていられない実態がある(零細経営の場合は特に)。
検品係を配置するなら当然、人件費(最低でも時給1000円程度)がかかる。
次の話は異物混入ではなく、一般的な工場に多い話となる。
工場という職場では、作業開始後に作業上の注意事項、ミスの事例報告、その他の伝達事項を伝える際、工員は手を止めず、「作業をしながら聞け」が普通のスタイルである。
ベルトコンベア方式なら止めるのが難しいし、納期に追われていることもあり、軽微な「お知らせ」なら、「作業しながら聞け」でいいのだろう。
しかし、さすがに障害者や、言葉の壁がある外国人技能実習生に対しても同じやり方である事に驚いた。
しかし、「こういう仕事のやり方」は結局は、安全確保やその他の重大な案件であっても、この略式スタイルで済ませてしまうことになる。
「便宜上、省略すると、それがクセになってしまい、ほうら、やっぱり、案の定」ということになる。
工員は聞いているようで、実は「分かったような顔と返事をするものの、上の空で返事」をしているケースが多い。
まあ、すべての工場がそういうわけではないだろうが、私が知っている「その工場」に関しては「わざわざ、そのうち事故を起こすやり方」をやっていたとう話である。
ミスを無くそうとしない仕事のやり方は、悲しくも「ハインリッヒの法則」に大いに繋がっていく。
(画像引用元)
余談だが、私の社会経験では、オフィスでも農場などの現場でも、従業員は伝達事項を聞く際、パソコン操作や資料閲覧、その他の作業の手を完全に止めて、話している人の方をちゃんと向いて、「人の話をきちんと聞く」のが常識であった。
そうしないと「話を聞いているのか」と注意されたものだ。
だが、工場という職場では、そうでなない(ところが多い)。
今回は批判的な記事となったが、企業経営の根本に立ち返りたい。
そもそも、企業は社会貢献をする面もあるものの、社会の恩恵を受けることで営利活動をさせてもらっている存在でもある。
それに加えて人身事故はその人の今後の人生を制限する場合があるし当然、医療費や福祉予算を逼迫することになる。
なので「うちの工場のやり方」よりも、ヒューマニズムや社会通念を上位に持ってきてもらいたいものだ。
なお、労働衛生管理に関する法令やガイドラインはたくさんあり、罰則規定もありますが、国は実態としては「あまり取り締まらない」運用をしています。それは大人の事情です。
ということで、工場や作業場にお努めの方は十分に用心なさってください。