今日の話題は、
①「学生インターン」にも労働基準法が適用されるということ
②外国人留学生のインターンの紹介
③政府はブラック企業を取り締まるわけがない
の三点。
①について
インターンに関する話題は、主に学生さん(外国人留学生も含めて)に関係することとなる。この※就職難に付け込んだ「ブラックインターン」が横行し、学生を当たり前のように「タダ働き」させる時代が到来した。
(※大学・大学院卒でも正規雇用率は76.2%で親世代の100%近くとは大違い。コロナ発生後となる2020年度はさらに悪化したと思われる)。
(76.2%の根拠:厚生労働省サイトの14ページ)
ブラックインターン問題は、少なくとも10年前にはすでに社会問題として浸透しているが、10年以上経た今でも、この問題は解消されるどころか、ますますエスカレートしていると言わざるを得ない。
そらまあ、今の時代、大学生のインターンシップ参加率は79.8%にも達するというから、ブラック企業がこの”労働力”を放っておくわけがない。
インターンとは名ばかりで実態は「アルバイト」同様の内容であり、労働法違反となっているブラックインターンがたくさんある。
これは、インターン実習生を無給(又は最低賃金以下の給料)で長時間労働させ、人件費を節約するという悪質な行為と断じるほかない。
以下のサイトは法律事務所が開設しているもので、違法インターンの事例を具体的に挙げている。
・違法なインターンの例
・適法なインターンの例
・違法なインターンをするべきでない理由
・違法なインターンに参加してしまった場合の対処法
https://roudou-bengoshi.com/saiyounaitei/3941/
②について
厚生労働省が外国人留学生を対象にインターンシップを斡旋している情報
このインターンは無給だが、厚労省のお墨付きなのでさすがにブラックインターンではないだろう。笑。
関西では厚生労働省の出先機関である「大阪外国人雇用サービスセンター」が外国人留学生にインターンの斡旋をしている。
③について(プチ社説)
どうして政府がブラックインターンを意図的に放置しているかその理由を約1900字で説明します。興味のある学生さんはどうぞ)
確かに政府としては「ブラックインターンは法律上は違法となるようにちゃんと法整備をし、建前上はインターン実習生を保護している。
しかし、その実態は「意図的に取り締まりは最低限度にとどめて、放置に近い状態」にして、違法行為をする企業を擁護している。しかしながら、自分たちはちゃんと仕事をしてますよという「アリバイ」(無罪証明)は作らないといけない。日本はG7の国一つであり、国際労働機関(ILO)に加盟してる手前もある。
そこで、取り締まりを全然しないのはさすがにマズいので、政治力を持っていない※中小企業(特に零細経営、個人経営)のブラック企業を相手に、見せしめ的に懲らしめるのである。(※経営基盤が弱いからブラックでない人でも、ブラックな手段を取らないと経営存続できないケースも少なくない)。
そして、国会で当然、野党から「法律が機能していない」と手厳しく追及されことになる。そこで、さっきの「アリバイ」を持ち出し、「政府もできるだけの取り締まりをしていますが、人員が足りないから追いつきません。今後、鋭意に取り組んでまいります」などと、お約束どおりの釈明をすることになる。
そして国民の多くはその国会中継や政治討論会の光景を見て「まあ、仕方がないなあ...」と、しぶしぶと納得。実にいつもどおりの”お約束”の茶番劇だが、「和」を重んじる日本人的なやり方と言える。
(なお、公務員を「減らせ減らせ」と散々、騒いだのは時の政権与党ではなく、国民の大部分であることは明確にしておかないといけない。なぜなら、政権与党からすると自分達の政策を実行させるための手足はできるだけたくさん、持っておきたい)。
物事とは自分を相手に立場に置き換えて考えてみることが大事だ。もし自分が政府の要人の立場だとどう考えるか?
もし、自分の一族が経営してる企業が「違法行為」をしている場合は当然、役所に取り締まりなんかさせない。また、「政治献金」をしてくれる会社の取り締まりをすることもあり得ない。
さらに言うと、ブラック企業を取り締まると、現実問題として※国(と自治体)の税収が減る問題もある。
以下の話は計算が出てくるのでちょっと話はややこしくなる。
まず最初に重要なことを説明する。それはアルバイトの場合、103万円までは所得税を払わなくてよいことである。仮に企業が10人のインターン生に各10万円、合計100万円支払ったとする。10人の学生全員が各人の合計所得が103万円を超えない場合は、所得税は0円(=0円×10人)となる。
合計所得が103万円を超えた場合、超えた分に対して5%の課税となる。例えば合計所得が113万円(バイト収入103万円+インターン収入10万円)だった場合、103万円を超えた10万円に対して、一人5千円(10万×5%)が課税されることになる。
しかし、10人合わせても最大でも所得税は合計5万円(5千円×10人)にしかならない。
一方、企業が無給でインターン実習生を使えば本来なら人件費として払っているはずの100万円がまるまる企業の純利益となる。この場合、下の表によると国と自治体に入る税収は標準的なケースで100万円×33.6%=33万6千円となる)。
↓企業にかかる各種税金の合計
国はなんと、ブラックインターンを取り締まると28万6千円も儲け損なうことになる。(=336000-50000=286000円)。
更に言うと、取り締まりのために監督基準署の職員が何名も、その業務に張り付くことになるので、その経費(主に人件費)は安くない。仮に10万円かかったとすると、その10万円が28万6千円に加算され、なんと38万6千円(28万6千+10万)もの国損となってしまう。
まあそういうことなので、政府からすれば、税収面だけで見れば、ブラック企業を取り締まれば取り締まるほど損をする現実がある。見方を変えれば、ブラック企業の味方をすればするほど政府も儲かることになる。
このことから、政府が「違法インターン」を取り締まるつもりなど(免罪符とILOへの釈明程度の実績作りを除けば)毛頭、ないことがよくわかるだろう。
誤解がないように言っておきますが、もちろん現場(労働局、監督基準署)の社会正義の観点から独自の判断で動いてますし、行政機関から注意を受けたらすぐに改める企業も少なくありません。
というのは、企業からすれば「インターン実習生は法律のことを知らない学生なので、あわよくばタダ働きさせてやろう」という感覚でついつい、出来心や軽いノリでやってる企業が多いからです。
就職難なので、貴重な若い時代の時間を「就職予備校」に費やすことになって可哀そうに.....とか学生は真剣な思いでやっている.....などという認識をオトナはあまり持っていません。
さらに言うと、そこで働いている社員も違法インターンであることを知らなかったり、知っていても疑問にも思わないし、会社に諫言することもないし、役所に通報したりもしないし、労働組合も知らんぷり。
そもそも論だが、無給インターン被害に遭うのは若者、学生、外国人留学生。「若い頃の苦労は買ってでもしろ」という考え方も根強くいため、若者が被害者の場合は一転してブラック企業や違法雇用を正当化する声も少なくない。
そういうモノの考え方自体は日本人としては標準的と言えるのは確かだが、違法行為には一線を引かないと秩序を保てないでしょうが......。
だめだこりゃ。
そういうことで、インターン生、そして就活生は幸運を祈ります。