2024.6.21. Fri.
1:12 目覚める。夢を見ていたが、思い出せない。
今日は夏至。
そろそろ空が白んでくる頃だな、と階下に降りて一服する。
あっ、今日は厚い曇りか。一年で一番早い朝焼けは見れないな、と気づく。
札幌の夏至は晴れが多いのだが…
かつて、稲に 20時間日長を浴びせ、稲の花が長日でも咲くか調べたことがある。稲は短日で咲く短日植物である。咲くまで観察を続けるのだが、のほほんと見ている訳ではない。何せ稲が進化史上浴びたことのない異常環境。発育のつぶさを観察し、発育に異常がないかを常に確かめ、栄養が不足したら肥料をやり、根腐れが起こらぬように根を丁寧に洗ったりした。札幌では夏至に 21時近くまで明るく、2時すぎから空が白むことから設定した実験環境が 20時間日長である。
持久戦だった。
結局、4年観察して、一年生型野生イネは肥料がなくなると、20時間日長でも花が咲き、肥料があると、花が咲かなかった。多年生型野生稲は反対に肥料があるとき、気まぐれに花が咲いたが、肥料が無いと黙々と葉を生産した。これは、感光性より一年生、多年生の生活史戦略が優先されることを意味する。
4年経って、僕の永遠の夏休みは終わった。たったこれだけの知見が得られるのに、博士課程の 3年間+1年がかかった。体力は限界を超え、体重は48キログラムになった。奨学金が支給されなくなった+1年は、金が無いので、日中はカレー大盛り一杯を食べるのが精いっぱいだった。当時付き合っていた彼女のズボンが余裕ではけたくらいやせ細ったのである。
しかし体から得られた知は尊い、と信じている。
幸い、これを書いた論文は、国際誌に掲載され、可塑性分野の大御所が書く前線研究を紹介するレビューに使われた。少し、報われた気がしたが、体力の損耗がはげしく、とにかく休みたかった。しかし、このタイミングで、二人目の姪、もえぎも育児をすることになったのである。奨学金が絶え、月25万の支援は助かったが、かわりに育児する約束をしたのである。育児と研究に集中するため、彼女とはきっぱり別れた。
夏至になるといつもこの[永遠の夏休み]を思い出すのである。
熱病にうかされ、汗がじわりと布団に染み込む、熱帯夜、女の吐息、エロティシズム、それが永遠の夏休み。
2:38。どうやら空は白まないようだな。目をつむろうか。電灯を消そう。
躁がいきなり現れたらしく、眠れない。さっき南さんから、なんて時間におきてんだか、という感じのコメントがあったが、躁で覚醒すると頭が痺れていても眠れないのだ。博士課程の時期は極躁で、寝ない、寝ても 2時間程度がザラだった。でなければ、上の姪、ゆうきの育児に並行して研究などできなかっただろう。
腹減ったな。何か食べるものはないだろうか、と食糧庫を漁る。あっ、揖保乃糸があった。朝飯はつけそうめんにしようか。
ふぅ~、満足満足。
ごろり。
眠れないから、本でも読もうかな、と「統計ソフト「R」超入門」を取り出す。
今日は 9時半から訪問介護があるから、それまで、Rコマンダーの演習でもしようかな。
訪問介護も今日で大掃除は終わりだ。来週からは、皿洗いと床とトイレの軽い掃除だけになる。
ま、もともと生存確認のために来てもらっているようなものなので、やっと本来の目的にたどり着いたのである。
さ、演習しよう。
バージョンアップした、統計ソフト R は若干使いづらい感じがしたが、慣れるだろう。まだ、描画の段階なので、そんなに頭は使わない。
7時をまわった。トレペと蕎麦を買いにゆかねばな。
と、移転し、14日に新規開店したセイコーマートへゆく。
あのサボりのおばさんは今日もいなかった。クビになったのだろうか?まあ、開店時間に開店しないおばさんだから、クビになっても仕方ないかと思った。
少し陽がさしているので、林にゆくことにした。
柔らかな木漏れ日が美しい。
お気にのベンチに座り、たばこを吸う。
ほおける。
さっ、訪問介護まであと一時間。帰って図を一枚作成しよう。
9:30 ちょうどにイトウさん来る。イトウさんは今日も元気な挨拶をする。皿を洗ってもらい、次に換気口を掃除してもらった。見違えるようにキレイになった換気口。多分、この部屋を使った歴代住人は、換気口の掃除をしなかったと思う。
イトウさんが暑がるので、ついに、扇風機を箱から取り出し、組み立てた。ここに住んで初めて扇風機を回したのである。いや、札幌に来て36年、一度も扇風機をまわしたことがなかった。
イトウさんが去年の猛暑のとき、量販店のフロアから、扇風機、クーラーが無くなったと以前言っていたから、あわてて Amazon で扇風機を買ったのだった。去年の夏は、熱中症、骨折、横紋筋融解症、コロナ、横紋筋融解症パート2でほとんど入院していたので、クーラーの無い生活は数日だった。その日数でも耐えがたく、体が衰弱していったのを覚えている。もう扇風機が無いと耐えられないだろうと思った。
満足したのではや上がりしてもらうことにした。イトウさんは済まない感じを見せる。サガさんのようなラッキー、もう働きたくな〜いな態度はしない。
昼飯は、冷やしたぬききしめん。今年初冷やし麺を胃にいれた。やっぱり暑いのかな?一応、窓全開にしているけどな。
正午からまた、こねこの林に行こうと思っている。曇りの予報は外れて、うすい青空が広がってきた。
午前中に直した図を眺めた後は、「統計ソフト「R」超入門」をパラパラめくるつもりだ。
農業試験場時代のもと上司から連絡(メール)ある。
データは試験場のものだから、契約をした研究者でない限り、提供出来ないとのことだ。だが野生イネを使った品種改良では、その野生イネを僕が北大から譲り受けたものだ。契約していないから、データを渡さないというのは、ジャイアン的態度だ。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のものといった感じ。少し腹がたったが、だから協力が得られず国の試験場は孤立するんだよな、と少し冷める。筑波の魔の手が及ぶだけだ。
まっ、学会発表の発表媒体が分かりさえすれば、こっちのもの。大人しくしていよう。学会発表の内容が分かる情報を得たら、こっちのものだ。
本、読み飽きたな。
顔が焼けている感じがする。木陰といえど、やはり陽にあたっているのな。
まあ、健康的だ。
さ、一服したら帰ろうか。
〈ジューンブライドシリーズ④〉