「ワン!ワンワンワン!!」チョコは早く散歩に行こうとケージの中で暴れている。
「ダメ!チョコ!コラ、吠えないの!まだ5時よ。」
フランチェスコのレッスンを受けて、美咲は確かに変わって行った。以前のように泣きたくなるようなことはもうなくなっていた。
しかし、相変わらずチョコの問題は解決してはいなかった。
いつもの場所に着くと、既にフランチェスコが来ていた。
「どうしたの?美咲、そんな顔をして。」
美咲の浮かない顔は、フランチェスコにもすぐに伝わってしまった。
「フランチェスコの教えてくれること、私少しずつ理解してきたような気がする。でも、相変わらずチョコが吠えるのは直らないわ。私も、つい大きな声で叱ってしまって。これじゃあ、結局何も変わっていない。昨日せっかくいい気持ちになったのに、チョコのせいでまた逆戻りしちゃった。」
フランチェスコは大きな声を上げて笑った。
「フランチェスコ、私大まじめよ。」
脳のしくみその1 脳は事実をすり替える
「美咲、チョコが吠えたから、あなたは嫌な気持ちにさせられたのか?」
「そうよ。」
「なぜ?チョコが吠えると、あなたが嫌な気持ちになるのかな?」
「だって、私はこんなにがんばっているのに、チョコはちっとも分かってくれないんだもの。」
「じゃあ、チョコが吠えなければ幸せなの?」
「そうとは言い切れないけど。」
「あなたは、事実と結果を同じ(イコール)と考えているね。」
事実:チョコが吠えた
↓
結果:嫌な気持ちになった
「ええ、だって、そうじゃないの?」
「じゃあ、誰が見ても同じ結果になるかな?」
「それは…」
「違うよね。実際は、事実と結果の間に、あなたの気持ちがあるんだよ。あなたは知らず知らずのうちに、その結果がうれしいとかうれしくないというように判断しているんだ。」
事実:チョコが吠えた
↓
あなたの受け取り方:理解してもらえていないと感じた。悲しい・・・
↓
結果:嫌な気持ちになった
「チョコが吠えたことは事実だ。でも、それは単なる出来事に過ぎない。例えば、チョコが他の犬に吠えているのは、あなたを他の犬から守ってくれているとしたら、あなたはチョコに対してどんな気持ちになる?」
「え?そんなこと考えたこともなかったけど。」
「例えばだよ。」
「もしそうだとしたら、守ってくれてうれしいと思うわ。でも大丈夫よって言う。それからありがとうって。」
「そうなると、この図はこう変わるね。」
事実:チョコが吠えた
↓
あなたの受け取り方:守ってくれてうれしいと感じた。
↓
結果:ありがとう。大丈夫
「どう?同じ出来事なのに、あなたの受け取り方が変わると、結果がまるで違う。前に、問題を整理する時に、事実だけを見るようにという話をしたよね。「問題」と「事実」は異なる場合がある、問題とはあなたの目というフィルターを通して見えていることなんだと。それと同じことだよ。あなたの受け取り方次第で結果が変わることがあるということを覚えておいて。」
「よく分かったわ。でも、チョコが私を助けてくれたというのも想像じゃない?」
「それは確かにそうだ。でも、迷ったときにはいい方を受け取ることが幸せへの近道だよ。だって、今のあなたは、本当かどうかわからないことを疑ったり、不安に感じて、結果として嫌な気持ちになっている。それなら、本当か分からないけれど、幸せな気持ちでいられた方がいいと思わない?」
「それもそうね。」
「それから、さっき、『私がこんなにがんばっているのにチョコは分かってくれない』って言ってたけど、あなたはがんばることをやめたはずだよ。」
「あ、いけない。そうだったわ。」
フランチェスコと美咲は顔を見合わせて笑った。
つづく・・・

