対馬は神々の誕生から現在までの発展の過程を知ることの
できる稀有な島である。最古の神々には、白嶽、嶽ノ神、寄神、
元山などが挙げられる。今回は上対馬町西泊の元山信仰に
ついて紹介したい。
西泊の住民が元山様と呼んでいる神様は、殿崎先端部の
北側浜辺に観音様と隣接して祀られている。海岸に道路は無く
露出した海石の上を徒歩で参拝している。元山様の神域は石を
積み上げて囲っただけで祠や鳥居などは無い。
祭典は旧暦1月14日に行われる。地元では「殿崎詣り」と言って
いる。かつては住民は正装して参拝する習わしであった。参拝後には
浜辺で焚火を囲んで直会をした。子供たちは学校を早退してお参りする
ほど盛大な祭だった。
各家ではご馳走を重箱に詰めて持参した。そして赤飯を現地の
海水を使っておにぎりにして元山様にお供えした。祭の世話役は
西泊の五軒の家が持ち回りで宿番を務める習わしになっている。
高齢者で参詣できない人たちは宿で賄った。
元山様の由緒については伝承が残っている。昔、殿崎に大きな
松があった。五人の住民が松で臼を作ろうと伐採したところ、
根元から白蛇が現れた。そのため、松や土地は神様の所有
であると悟ったという。そして祭祀を始めたそうだ。
また、殿崎には御嶽の神様の通る道もあるという。