第4章 マイクの匿名入院
4-3
マイクは、ギブスを巻いて車いすで動けるようになり、鈍った体を元に戻そうと積極的に
動いていた。
そんな時、廊下の端から白衣ではない男性が近づいてきて、
『クリードさんですか?アッツ、マイクさんでしたね』
『私は総務部の佐々木と言います』と名乗り、右手を出してきた。
マイクも右手を出しながら
『マイク・サタケと言います、お世話になっています』挨拶をした。
『院長から聞いて、その打ち合わせに来ましたが、お時間ありますか?』
『私は、寝るか、食べるかしか仕事はないので、いつでも暇です』
『では、お部屋でお話を聞かせてください、やはり日本が上手ですね』と言いながら、
病室に入った。
ソフアーとテーブルを備えられているが、車いすなのでテーブルだけベットの脇に移動。
佐々木部長は椅子を引き寄せ、大きめの手帳をテーブルに置いて座った。
『大体の話は、院長から聞いたのでポイントだけ、打ち合わせて置こうかなと思いまして・・・』
『まず、報道関係には、この後電話しますが、期日は明日で良いですかね』
『私は、打撲の治療だけが続きますが、大丈夫です』
『時間は、午後3時00分ごろを設定したいと思います』
マイクもメモをしながら、少し遅いなと感じたが・・・
『ポイントの一つ目ですが、訓練中の事故という事ですが、将校が運転することが
不自然ではないか?と言うのが、院長が後で気づいたことですが』
『この辺が指摘されそうな気がするので、あえてポイントにしました』
『そうですね、特に野戦演習の場合は、交戦中に運転手の負傷を想定することは
ありますが・・・』
『では訓練の想定内で、緊急時の移動とか連絡とかにして置いてください』
『そうですね、不自然な事故になりますね』
『院長先生は、鋭いですね』
『いやー、院長も野戦病院を仕切っていた人ですから、今回の事故には強い関心を
お持ちですから・・・』
『午前中のミーティングでも、ストーリーつくりは院長先生の発案ですから』
『好きなんですよ、軍医じゃなくて現場で指揮を執りたかったのじゃないですかね』
『マイクさんは、院長のストーリーをアレンジして、話してください、谷沢千治さんと
桧山健司君と和田先生が都合付けば、参加する予定です』
『あっ、そうですか、少し遅い時間だなと思いましたが、健司君は学校ですね』
『そうなんですよ、質問が集中しないように、私の方でコントロールします』
『それでは、私もストーリーを書いて記憶しておきます、でも、私が間違えても
許されますね、記憶が曖昧なのだから・・・』とマイクが笑い出した。
『そうか、その手がありましたねーでも、マイクさんが日本語が堪能なので、明日の
記者発表は楽ですね、この辺がポイントの2つ目かな』
『大体の認識が合えばいいので、これくらいでしょうね』
『よろしくお願いします』
『院長も、何か嬉しそうな雰囲気なんですよ』
『皆さんの、好意的な対応で、本当に助かりました、有難うございます』
『それは、マイクさんの性格の良さと、日本語の話し方が起因したのでしょうね』
『最初に、健司君に助けていただいたのが、ラッキーでした』としみじみ・・・・
『そうですね、何もかもそこが始まりでしたねーそれでは桧山さんのお宅に電話して
おきます』と、立ち上がる。
翌日の9時ごろ、和田先生とK軍曹が中型の輸送車で、祖父の家を訪ねて来た。
『千治さん、ジープを引き取りに来たらしいよ』K軍曹と運転手も降りてきた。
『早かったね、先生も朝からご苦労さんです』
『私は、暇な医者だから良いのだが、K軍曹が私の家しか知らないので、案内して
来たが、私もジープの残骸に興味があったので・・・」と笑っていた。
『少し待ってください、運び出す手が欲しいので、2-3人たのんでみます』
『私も、出前のお礼をして置くかな、一緒に行くか』と後ろに付いて歩き出した。
K軍曹と運転手も後ろに付いて着たので、異様な組み合わせの4人が岩井屋の
前に現れた。
静かな温泉街を、変な組み合わせの4人が、英語で会話しながら来るので目立つ。
旅館では、何事かと番頭さんより先に、ご主人が飛び出してきた。
『また、何かありましたか?』と聞く。
『若い人を、2-3人お借りしたいのですが~』と切り出した。
ご主人は、側に付いて来た番頭さんをみると、『いまは、2人しかいなのですが』
『千治さん、2人だけならすぐ出せるが、力仕事なのだろう』
『そうです、事故のジープを運ぶので~』
祖父は、後ろのK軍曹に英語で、『5人で良いかな?』と聞くと
『はい、ジープは軽いですから、いつも4人で戻しています』
『じゃあ、お2人お借りします』と頭をさげた。
『番頭さん、2人に支度してくるように言ってください』
『私も行きたいのですが、良いですか?』
祖父が、
『はい、明日には米軍の情報も公開されるらしいので・・・』
『地元の人が現場を見たいと言っているが、大丈夫か?』
祖父が通訳すると、
『イエス、問題ないでしょう』
『明日、午後から記者発表があるらしいので、それまでは外部には・・・』
祖父は、みんなにもわかるように、通訳して聞かせた。
『なるほど、地元で起きたことでも、難しいもんだね』と言いながら、
『足元を固めて来るか』と旅館の方に、歩き出した。
祖父が、K軍曹にランチの用意は?と聞くと、
『まだ決めていません、レストランはありますか』
『そんなしゃれたもの、ないよ』祖父が、後ろ姿のご主人に
『岩井屋さん、ついでにお願いがもう一つありますが~』
『何かありますか』と振り返った。
『実は、戻ってくるのは昼過ぎになりそうなので、この2人にランチを用意したいの
ですが、お願いできませんか?』
『あー大丈夫ですよ、まだ2時間近くあるので充分用意できますが、メニューは任せて
頂きますが良いですか』
その話を、2人に伝えるとお喜びで、『ラッキー』みたいにはしゃいでいる。
祖父が輸送車に乗り込み案内、和田先生も2人の応援者と一緒に岩井屋の車に
乗り換え、後ろに付いた。