【感想芸】ミドルエイジファンタジー


読者の方どうもこんにちは、脳内フリーターズのキャップ谷岡です。今回は新企画です。我々が最近観たもの聴いたもの触ったもの食べたもの嗅いだものに対する感想をお送りするプログラムでございます。いわゆる「感想芸」ということで、プログラムタイトルは「感想芸界」でございます。よろしくお願いいたします。

今回の感想対象はこちらです。現在放映中の特撮ドラマ『ウルトラマンアーク』の1エピソードの第9話「さよなら、リン」の感想です。



この話を一言で説明するなら「中年男性と若い娘さんのプラトニックラブストーリー」ですね。ラブストーリーなんですが、タイトルが「さよなら、リン」ということで切ない別れの物語になります。もうタイトルの段階でネタバレしてますよね(苦笑)。ちなみにリンというのは、怪獣や地球外生命体などに対応する組織である「SKIP」の星元市分所所属の隊員の名前です。フルネームは夏目リンさんです。歴代ウルトラシリーズの伝統に従いリンさんも美人さんです。美人さんなどと言うと「またルッキズムか?見た目が良ければいいのか?」などとどこかから非難の声が飛んで来そうですが、心の話ですね。「心美人」ということですね。「心美人」であることも含めて「美人さん」なんですね。わたくし谷岡内のルールとしまして、見た目と心の両方が美人であるという条件を満たした方に「美人さん」の称号を授与することにしています。ルールその1ですね。どうでもいいと思われるかもしれませんが前もって「人を見た目だけで判断する人間だと思ってもらっちゃ困るぜ!」と念のためにアピールしておきます。そこのところよろしくお願いいたします。


なおちなみに夏目リンを演じる水谷果穂さんはかつて仮面ライダーシリーズの『仮面ライダーゴースト』でも夏目さんを演じたことがあります。


偶然…ではなくて分かってやってるネーミングだと思います(決めつけ)。あとはスーパー戦隊シリーズへの出演が待たれますね!待たれますね!関係者の方!
話を「さよなら、リン」に戻しますと、タイトルに名前があるようにこのエピソードの主役はリンさんです。先ほども書きましたプラトニックラブストーリーのヒロインがリンさんなのです。
そしてお相手の中年男性がこちらの方です。リンさんと同じくSKIPの本部怪獣分析班に所属する山神サトルさん(演者は池田努さん)です。



https://cocreco.kodansha.co.jp/telemaga/news/feature/arc/bEukC



中年男性と書きましたが、同じ中年男性でもアラフィフのフリーターの我々とは雲泥の差のきちんとした男性です。妻子もお持ちです。立派な大人の男の人です。
立派な男の人ですから、当然憧れられます。山神さんはSKIPに入る前に教師をしていまして、教師時代に大学で講義していたところに、女子高生時代のリンさんが講義を聴きに来ていたという過去があります。リンさんにとって女子高生の頃から山神さんは憧れの対象だったのです。しかしこの物語は特撮ドラマということで、「特殊なジャンルに傾倒する同じベクトルを志向する男女が惹かれ合う話」になっているところが精神的マイノリティ志向人間の心を鷲掴みにします(笑)。描かれ方としては二人とも世間一般的には「変人」カテゴリーなんですね。そこが素晴らしい!言うなれば「変人の恋」ですね。わたしも擬正常者のモグリの変人ですから変人同士が幸せになってほしい…と思うのですが、結局山神さんはリンさんではない別の女性と結婚してしまいます。「嗚呼!変人同士くっついていれば後の悲劇は避けられたかもしれないのに!」と変人が心の中で絶叫してしまう方向に物語は進んでしまいます。ちなみに山神さんが結婚することが発覚するシーンで、山神さんが婚約者からの電話に対して嘘をつくのですが、その際に顎に手をあてるんです。その「嘘をつくと顎に手をあてる」という癖があるということがわかります。それが物語の肝になります。
話をその数年後の現在の二人に戻しますと、それから別れ別れになりながらも二人ともSKIPに入り、そしてあることがきっかけで再会することになります。立派な大人の男の人である山神さんが不正を働いている疑惑が発覚するんですね。「SKIPという怪獣に関わる仕事をしている立場を利用して好事家に怪獣の標本などを横流ししている人物がいる」ということで、その人物が山神さんではないかという疑惑です。そして、リンさんに山神さんに接触してその真偽を確かめてほしいという話が持ちかけられます。その話を持ちかけるシーンで「基本的にリンにやらせることには反対なので嫌なら断ってもいい」という感じの台詞がでてくるところが優しい世界です(笑)。しかしリンさんはその話を受けることにします。
そして探っていくうちに、山神さんがクロであることが分かるんですけど、山神さんの言い分も分かるんですよ。山神さんの言い分としては「怪獣を闇雲に退治するんでなくて生かしてその怪獣のもたらすエネルギーを有効に活用しようよ」という考え方です。そのために必要な資金繰りのために不正を働いていたんですね。「怪獣を退治せずに共存する」と言いますと『ウルトラマンコスモス』の世界線に通じる話ですね。なので山神さんはマルチバース間のワープで『ウルトラマンコスモス』の世界線の住人になれば幸せになれるかもしれません(笑)。ところで登場人物のルール違反の話をいたしますと、ここ最近の特撮ドラマのルール違反する者の特徴なんですけど、ルール違反する者にはルール違反する者なりの哲学があるんですね。それが結構理に適ってることが結構あるんです。山神さんの不正を働いた理由もその例に漏れることなく理解できるところがありました。結局は「人類の明るい未来」を考えているんです。ただ目的は正しいんですけど、やり方が「ちょっと極端じゃないか?」とも思いますけどね(苦笑)。そこは勧善懲悪物語のためと言いますか、どこか間違ってるところがないと不正を正すことができませんからね。不正だから正すことができるわけですからね。まあ山神さんの行いの正否について考えて文章化するとコロコロコミック一冊分くらいの厚さの大作になりますのでここでは語りません(苦笑)。
話を物語に戻しますと、山神さんの目的は果たされずに、リンさんと山神さんと二度目の別れのシーンになります。そこでリンさんが「山神さんと過ごした時間が大好きでした!」という告白するところでわたくし涙がこぼれましたね。その台詞の前に「山神さんのことが…」と言いかけるところがまた涙を誘うんですよ。涙を誘うっていうかわたしの涙を制御する機能が経年劣化で涙腺緩くなってますから二人が向かい合ってるシーンが出たところで涙ダダ漏れなんですけど(苦笑)。そのシーンを見ながら「夏目さんということで夏目アドバンテージで「月が綺麗ですね!」と遠回しに告白するが理系男子なので分かってもらえない」というネタが浮かびました(苦笑)。告白しておきます。
話を戻しますと、そのリンさんの告白に対して「そんなに前のことは忘れたな」と山神さんが返します。そしてリンさんと山神さんがすれ違ったあとで、顎に手をあてるんですね。そうなんです、山神さん嘘付いてるんです。あえて突き放すような言い方してるわけです。わたくし涙が止まりません。
さらに涙が止まらないシーンが追い打ちをかけます。山神さんとの決別に涙が止まらないリンさんを懸命に励ますのがユピーというSKIP所属の超有能なAIロボットなんですけど、このユピーを生み出すきっかけを作ったのがリンさんと山神さんだということを示唆させるシーンがあるんですね。要するに母親の悲しんでるところを励ます子どもみたいな構図なんです。もう涙が止まりません。




このように切ない話なんですけど「じゃあどうすれば切なくない話になったのか?」と考えてみると、リンさんの女子高生時代に一緒になっていればということになるんですが、山神さんからすると教師時代に「ベストパートナーになる予感はするけど女子高生にそういう話するのは問題あるだろ」と考えてたかもしれませんし、当時のリンさんに告白してうまくいったかどうか…とか考えてもとか考えると答えが出ません。まだ考えてます(苦笑)。良質だと感じられる物語というのは余韻が残りまくるんですよ(苦笑)。
ところで冒頭に「中年男性と若い娘さんのプラトニックラブストーリー」と書きましたが、この話に感情移入できたのは中年男性が話の軸だったことが大きいですよね。「もしかしたら年の離れたベストパートナーが現れるかもしれない」などと淡い期待を抱いてしまわせるファンタジーですよね。まあ山神さんはわたしが持っていないものをたくさんお持ちな立派な大人の男の人なんですが(苦笑)。
あとプラトニックラブストーリー好きなんですよ。愛の無いセックスにも対応できる汚らわしいセックスアニマル機能も搭載したアラフィフの中年のわたしですがプラトニックラブストーリーが好きなロマンチスト機能も自身の内部にあるはずです。多分(苦笑)。
ということで、アラフィフフリーターの初めての感想文をお送りいたしました。ご静聴ありがとうございました。それでは今回ここまででございます。読者の方お付き合いありがとうございました。また次回です!

【終劇】

〈制作スタッフ〉
谷岡 敦(キャップ)

〈文責請負人〉
葛井 徹(中の人)