患者家族となった瞬間。

 

そう、患者家族には色んなことが押し寄せる。

 

夫が脳腫瘍と分かってから、一応医療従事者の私だって動揺するわけで、メンタルだって相当不安定になった。それは患者家族として当たり前のことなんだけど。

 

不安だから誰かに話したい、だけど夫は誰にも知られたくないから言わないでという。

 

夫の看護のため以前働いていた病院を辞める時、もちろん職場の仲間も医療従事者だから心配してくれる同僚もいたし、冷めた目で勤務に穴を空けた私を見ている人もいたし、声をかけてくれる同僚もいた。

 

それはそれですごくありがたいんだけど…。

 

知り合いの医師はすぐにセカンドオピニオンを受けろと別の病院のドクターにわざわざ電話してアポイントまで取り付けてしまっていた…(これはちょっと迷惑だった)

 

夫の病気を知る数少ない友達はいきなり「ホメオパシー」を持ちかけてきて、症状にあった砂糖玉をくれたり、本を貸してくれたり。代替療法やホメオパシー、それらはいいのかも知れないけど、ホメオパシーで脳腫瘍治ったらノーベル賞だし、脳腫瘍に起因した症状には効くかもしれないけど、正直こんなにでかい脳腫瘍と浮腫みにあの小さな砂糖玉が対抗できるかと言えば永遠の謎です、今でも。

 

そして色々な情報の嵐。身体によいと言われる健康食品、この食べ物が癌に効く、レシピ本の類も紹介されたけど、結局のところ、今現在できてしまっている脳腫瘍に対してそれが即効性のある治療法としての選択肢であったのかは謎だし、また、疲れ切っている患者家族がそれだけ食べ物に気を使ったりする余裕はないし、逆に癌によい食べ物や料理を提供できない自分に不甲斐なさを感じ患者家族の自信崩壊に繋がる。善意は患者家族を追い詰める結果になる可能性もある。もう食べ物に気を遣うどころじゃなくなる。受診とか今後のこととか考えることややることはいっぱいあったから。

 

そして極め付けスピリチュアル系の類。神様系の類。

 

なんか、すごい、これが一番つらかった。私も心が折れていたのもあるけど、ある偉い先生に?わざわざお金を払って行ったのに「東北で亡くなっていった死者の魂はどうなるんだ!」って言われたこと。私があまりにも夫の病気のことを言うものだから(患者家族はそうだと思う)なぜ周りを見ないんだ、何がしたいんだ、的なことを言われ、患者家族はそれでも藁をもすがる思いで来ているのに踏みにじられたような気持になり、それが一番つらかった。

 

夫の手術が終わってからもしばらくアルバイトしていた訪問看護ステーションで男性の上司に「お前は夫が夫がって、自分ばかり世の中で一番不幸で自分を気にしてくれアピールばかりして、こっちだって仕事しているんだ!お前の家庭の事情なんか関係ない、仕事をしろ!」と怒鳴られたこともあった。私は夫の病気のことは伝えていたけど、それで仕事を休んだことは一度もなかったし、むしろ働かせてもらっているからと常勤の人の夏休みの代わりに出勤したりもしていたのに。

 

夫の病気を通じて、結構人が嫌いになった。そして自分が医療従事者なのに、意外と患者に対して上から目線で、患者の気持ちを理解できないのも医療従事者に多い傾向があると知ってしまった。

 

でも、まぁ、それはもう置いておいて。

 

悔しさや、そのつらさをバネに、やっぱり自分が一番しっかりしていないと夫や家族は守れないと強くなれた。次にまた夫が倒れても、家族が倒れても、流されることなくやっていける。もうちょっと動揺しないでやっていける。

 

確かにさ~、自分だけが一番不幸って口にしてなくてもそういったオーラ出まくっていたかもしれないけどさ。相手の言い方だよね。この記事書いていて、本当に久しぶりに涙出てきちゃったよ。忘れたいことばかり、つらいことばかりだった、去年から。

 

春が来たら夫の脳腫瘍発覚の日にちが思い出されるから春は嫌いな季節になった。4月15日へのカウントダウンが始まると思うと本当に気が滅入る。結婚記念日より、自分の誕生日より覚えている4月15日。

 

人からよくしてもらったこと、色々な支えがあったからこそ今があるのかもしれない。けどそんな気分になれない患者家族や納得のいっていない患者家族はたくさんいる。そういう時はそれでもいいと思うし。「こいつ暗いな」「毒ばっかり吐いて」「自己中心で自分だけ不幸アピールしやがって」って思われても、結局他人に患者家族の気持ちなんて理解できないし、実際にならないと分からないんだから。全員が全員納得して、よい患者、よい患者家族にはなれないのだから。