放射線の胎児への影響 | フクシマハートネットワーク

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長崎大学ゴローバルCOEプログラム
「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」というサイトのQ&Aに下記の文章が、転載させていただく。

 
Q

25歳で妊娠8か月です。妊娠3か月の時、おう吐と食欲不振のため病院で受診し、胃のレントゲン撮影を受けました。今の状態のまま出産しても子供は大丈夫でしょうか。
A
 胎児は放射線に敏感です。被ばくは最小限にとどめて下さい。
 
 医療の現場で、レントゲン撮影時に特に注意しなくてはいけないこととして「女性をみたら妊娠と思え」という戒めの言葉があります。
 この人は妊娠3ヶ月で、すでに被ばくしていますが、結論から言えば、放射線による障害を特に心配しないでよいといえます。
 放射線を被ばくしなくても、一般出産の千人に1~7人の割合で奇形が起きる頻度があります。医師がきめ細かく診察すれば、4%ぐらいには何らかの異常が生まれながらに発見されることを、まず、理解しておいてください。
 つまり、多くの要因(薬剤、タバコ、アルコール、ウイルス感染、内因性遺伝子異常など)によって胎児の異常が起こるため、放射線による障害と断定するためには、かなりの被ばく線量を受けたという事実が必要になります。
 例えば、長崎でも大量の放射線を被ばくした胎児には流産、死産が多く、小頭症などの胎児奇形の頻度が高くなっています。すなわち、胎児が放射線被ばくを受けなければ、流産、死産が4%であったのに対し、放射線被ばくを受ければ23%になりました。

妊婦へのレントゲン撮影における胎児推定被ばく線量
検査の種類胎児の吸収線量(マイクロシーベルト/撮影1回)
胸部撮影<2
腹部撮影170
腰つい撮影350
骨盤計測撮影300~500
胃腸透視250
注腸透視6,500
ぼうこう造影160

 さて、そこで実際のご質問にあった妊婦のレントゲン撮影の際の胎児の被ばく線量は表のように推定されています。危険度は全胎児期間を通じて同じということではありません。例えば、妊娠初期の受精から10日以内であれば出産前死亡が起こります。器官形成期間、すなわち受精から8週間の間では奇形の頻度が増します。すなわち、一般に放射線が妊婦に悪いと言われるのは、この時期のことを指しています。
 一方、受精後8週から出産までの期間では通常の被ばく線量では胎児への危険性は少ないのですが、胎児の放射線感受性は成人より高いため、精神発達の遅れがみられます。
 このように妊娠初期には流産、妊娠2か月までには奇形発生の頻度が高いと言えます。
 医療被ばくの軽減目的で国際放射線防護委員会(ICRP)によって「10日規則」が勧告されていますが、これは、妊娠可能な年齢の女性の下腹部へのエックス線照射は月経開始から10日以内に実施すべきというものです。この根拠は、この間には絶対受精卵が存在しないということです。

 腹痛などでレントゲン撮影を受ける時は、女性自身が生理との関係を常々念頭におくことが大切でしょう。不用意なレントゲン撮影はだれもが避けるべきですし、過剰な放射線恐怖症による人工中絶なども慎むべきだと思います。