地面の作り方① | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

地面の作り方の前に、熊本城ミュージアムわくわく座での展示を動画にしました。
2月29日より、新型コロナウイルスの拡大防止のため、わくわく座は当面の間、臨時休館となりましたので、せめて映像でお楽しみください。
昨日は急遽、休館中のわくわく座へ行って、模型のメンテナンスをしてきました。
再開を待ちましょう。





それでは、地面の作り方、やっと記事にします。
お待たせ致しました。

【心構え】
ジオラマの地面は、全体の背景になる要素なので、目立ち過ぎてもいけません。不自然だと悪目立ちするので、とにかく「自然に見える」ことに注力しましょう。

いくつか地面の写真をピックアップしてみます。

豊臣大坂城[1/350]


彦根城[1/200]

豊臣大坂城[1/150]

福山城伏見櫓[1/150]

熊本城[1/150]


いろいろな表情がありますが、基本の表現技法は全て同じです。
つまり

下塗り
 ↓
質感表現
 ↓
色入れ
 ↓
仕上げ

の流れです。


手順に沿って。

①下塗り
下塗りは大切です。
黒っぽい色で全体を塗りつぶします。
これには大きく二つの意味があります。
まず、白い色を絶滅させること。
造形時に粘土や壁補修パテを使う場合、全体が白く出来上がります。「白」という色は強烈で、自然界に真っ白なものは存在しません(花を除く)。少しでも白が残っていると、これがとても目立ってしまいます。
まず、白を殲滅させるのが第一です。

2つ目の目的は、色の密度を確保すること。
ホビーでは、真っ黒な下地から色を起こすことをMAX塗りと言ったりしますが、濃い色の上に薄い色を構成することで、薄い色であっても重厚な色味を出すことができます。地面のように中身の詰まったものを表現するには、表層的な色味だけでは質感が表現できません。

上の写真の1/150熊本城は下塗りにアクリルガッシュの「セピア」を使っていますが、この他に、岡山城などでは「赤墨」

雪の松江城では「ランプブラック」

を使っています。
今現在、下塗りにはほぼ「セピア」「赤墨」「ランプブラック」のいずれかを使っています。最終的には隠れてしまいますが、この下塗りの違いは、最後まで影響していると感じており、今後もう少しバリエーションを増やしていくことになると思います。


この下塗りの上に色を構成していきますが、次に

②質感表現をする
地面の砂の粒など、ザラっとした表面を、造形します。
これには実際に砂状の素材を使用します。私はモーリンの「リアルサンド」を使っています。
この時、全体に均一に撒くのではなく、まばらにムラをつくります。この写真の彦根城は、比較的密に撒いていますが、実際の地面は踏み固められたりして、思ったより平坦なので、パラパラっと撒くくらいで充分です。

リアルサンドでテクスチャーをつくったあとに、改めて下塗りの色で塗りつぶす場合と、そのまま色を乗せていく場合とあります。

リアルサンドの撒き方で、表現の幅を広げることができます。
1/500くらいのスケールになると、リアルサンドの粒がオーバースケールになってくることもあるので、そのような場合は、全く使わないこともあります。

③色を入れる
いよいよ、地面の色を入れていきます。

地面の色に使うのは、アクリルガッシュの「ホワイト」と「砥粉色」、「ニュートラルグレー5〜7」の混色が基本です。
混色は、砥粉色を白で明るくして、グレーでくすませる、という感覚です。さらに焦げ茶系の色を少量加えるなどして、少しニュアンスを変えたりすることもできます。

ここで、砥粉色に白を加える場合と白に砥粉色を加える場合があります。結果は同じなのかもしれませんが、私の中では大きな違いです。

色は難しくて、同じ色でもスケールの違いによって見え方が変わります。毎回、スケールと作るものに応じて、目の奥にあるイメージの色に近づけて色を決めています。

目の奥にイメージがない場合は、画像検索で航空写真を見つけるなどして、お手本にしてみてください。

色を入れる時に濃い目に溶いて塗りつぶすようにする場合と

下地を透けさせながら薄く溶いた色を幾重にも重ねて

少しずつ濃くしていく方法があります。

全体を濃い塗料で塗りつぶすと、展示模型のような無機質でキッチリとした雰囲気になります。

フィンタリングのように、下地を透けさせながら薄い塗料を重ねていくと、

深い色が出て、この後の仕上げでさらにニュアンスを重ねていくことができます。

地面の1回目はここまで。
次回は仕上げの段階に進みます。