オンラインショップ陽明門の製作から | 城郭模型製作工房

城郭模型製作工房

城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

オンラインショップの商品の製作は記事にしていないのですが、こちらも受注製作でご注文を頂いています。

オンラインショップの建物単体作品の中でもとりわけ大変なのが陽明門で、5月の下旬にご購入頂き、2ヶ月の製作時間いっぱいいっぱいお待たせして、やっと明日発送となります。
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製作時間を今回はきっちり計りましたが、少しずつ進めながら延べ80時間を要しました。朝9時から夕方6時まで、昼に1時間の休憩を入れて丸10日間かかるということです。
ほとんどの作業が彩色。メッキは全て剥がして総彩色です。
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特にこの陽明門は作品の良さが写真に写らないことで苦労します。是非とも実物をご覧頂きたいのですが、そうそう作れるものではなく、今回もかなり消耗しました。

また、今回の作品は、オンラインショップの完成写真と少し違う出来上がりとなりました。
陽明門は、約四年間をかけて修復が行われ、今年の3月に公開となりました。その修復後の色合いを意識しているのです。

上が修復前、下が修復後。
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キラキラというよりギラギラです。
この修復には賛否両論あるようで、たとえば有名な厩の見猿言わ猿聞か猿の三ザルは
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表情が変わってしまいました。このような欄間の彩色彫刻は絵による表現の範囲も多いので、このようなことが起こるのだとおもいますが、とにかく綺麗になりすぎて驚くのだとか…
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私も是非とも実物を見に行きたいのです。

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修復に関しては、近年、ある傾向が見られます。それは、創建当初の姿に戻してしまうということ。
以前は修復といえば、汚れを除去したり、破損個所を埋めたり、元の状態の補修が主でしたが、近年は研究成果をもとに一気に時間を巻き戻してしまうような修復がよく見られます。

平等院鳳凰堂
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この時も賛否両論ありました。
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姫路城。
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白鷺城ならぬ「白すぎ城」と言われました。まあ、姫路城は昭和の大修理でも真っ白になりました。

特に平等院鳳凰堂修復の時、私は、創建時の色彩が見られる!という嬉しさと、あの古色蒼然とした姿が見られなくなる残念さとが半々でした。

建築物の美しさには、その造形の美しさだけではなく、その建物が重ねてきた長い時間と変化も含まれていると思っています。ですから、突然創建時の姿に戻ってしまうと、今までその建物が身を置いてきた時間と歴史が、消えてしまうような、そういう寂しさを感じるのかもしれません。

今回、ギラギラの姿で作るかどうかかなり迷いました。しかし、いつも言っていますが、模型は実物の写しではあるけれど、実物を離れて、その模型自体の美しさを追求することができます。ですので、修復後の美しい色合いを再現しながら、同時に、実物では失われてしまった「長い年月の末に醸し出していた風格」も再現する、ということも可能なのです。

以下、前回の模型と今回の模型との比較です。
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金の色目を少し変えました。

屋根の汚しは少し抑えながらも、質感を出してみました。
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ちなみに本物は修復で漆が塗り替えられ、ツルッとした屋根面になったようです。
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蜜陀絵の牡丹は背景の金の色目も全て変え、全体に鮮やかにしています。
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随身は修復後の色合い。
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今回は以前に増して細かい塗り分けをしています。
唐子遊びの中、大の字の子供が見えます。
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これはこの子です。
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フジミのキットは彫刻もかなり再現しているので、今度日光東照宮に行くことがあれば、全ての彫り物を写真に納めてこようと思います。

裏面中央、鶴に乗る仙人。
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やっぱり屋根にはこだわり、見る角度や光の具合で黒っぽく見えたり、青っぽかったり、となんとも言えない色を出すことに苦心しました。
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金属板の質感も出しています。
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ライト当てるとギラギラの姿も見ることが出来ます。
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今日撮った写真でラベルも作り、明日発送です。無事に届いて喜んでいただけますように…。
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