オンラインショップの建物単体作品の中でもとりわけ大変なのが陽明門で、5月の下旬にご購入頂き、2ヶ月の製作時間いっぱいいっぱいお待たせして、やっと明日発送となります。
ほとんどの作業が彩色。メッキは全て剥がして総彩色です。
また、今回の作品は、オンラインショップの完成写真と少し違う出来上がりとなりました。
陽明門は、約四年間をかけて修復が行われ、今年の3月に公開となりました。その修復後の色合いを意識しているのです。
上が修復前、下が修復後。
キラキラというよりギラギラです。
この修復には賛否両論あるようで、たとえば有名な厩の見猿言わ猿聞か猿の三ザルは
表情が変わってしまいました。このような欄間の彩色彫刻は絵による表現の範囲も多いので、このようなことが起こるのだとおもいますが、とにかく綺麗になりすぎて驚くのだとか…
私も是非とも実物を見に行きたいのです。
修復に関しては、近年、ある傾向が見られます。それは、創建当初の姿に戻してしまうということ。
以前は修復といえば、汚れを除去したり、破損個所を埋めたり、元の状態の補修が主でしたが、近年は研究成果をもとに一気に時間を巻き戻してしまうような修復がよく見られます。
平等院鳳凰堂
白鷺城ならぬ「白すぎ城」と言われました。まあ、姫路城は昭和の大修理でも真っ白になりました。
特に平等院鳳凰堂修復の時、私は、創建時の色彩が見られる!という嬉しさと、あの古色蒼然とした姿が見られなくなる残念さとが半々でした。
建築物の美しさには、その造形の美しさだけではなく、その建物が重ねてきた長い時間と変化も含まれていると思っています。ですから、突然創建時の姿に戻ってしまうと、今までその建物が身を置いてきた時間と歴史が、消えてしまうような、そういう寂しさを感じるのかもしれません。
今回、ギラギラの姿で作るかどうかかなり迷いました。しかし、いつも言っていますが、模型は実物の写しではあるけれど、実物を離れて、その模型自体の美しさを追求することができます。ですので、修復後の美しい色合いを再現しながら、同時に、実物では失われてしまった「長い年月の末に醸し出していた風格」も再現する、ということも可能なのです。
以下、前回の模型と今回の模型との比較です。
金の色目を少し変えました。
屋根の汚しは少し抑えながらも、質感を出してみました。
ちなみに本物は修復で漆が塗り替えられ、ツルッとした屋根面になったようです。
蜜陀絵の牡丹は背景の金の色目も全て変え、全体に鮮やかにしています。
随身は修復後の色合い。
今回は以前に増して細かい塗り分けをしています。
唐子遊びの中、大の字の子供が見えます。
これはこの子です。
裏面中央、鶴に乗る仙人。
金属板の質感も出しています。
今日撮った写真でラベルも作り、明日発送です。無事に届いて喜んでいただけますように…。