熊本城模型製作ドキュメント② 3月10日〜3月19日 | 城郭模型製作工房

城郭模型製作工房

城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

私は今日も別のことで東京に出てきておりまして、日本橋高島屋に立ち寄りました。閉店間際にも関わらず、皆さん写真を撮っていただいておりました。
{4E2DF233-788C-47B4-B539-6FD06BC5808C}

写真撮影が自由にできるので、ツイッターでも写真が拡散しているようで、奈良大学の千田嘉博先生もツイッターでリツイート下さっていました。
今日はジオラマ素材のさかつうさんのメルマガでもこの模型のことを取り上げて下さり、ウッディージョーの社長さんも見に来てくださっている(はず)です。各方面より見に行きます、見ました、とのお声を頂き、反響の大きさに驚いています。
{C4CBEFAE-3F55-4737-A3AB-F5C86B3BC074}

高島屋さんからのご依頼は「できるだけ大きな熊本城の模型、ジオラマ」という漠然としたものでしたので、こちらから提案して、この三基を作りました。

宇土櫓と飯田丸五階櫓は、熊本城にも模型がなく、(宇土櫓の構造模型はありましたが、地震で無事かどうかは定かならず)今回製作できたことはとても意義のあることと自負しています。だからこそ何が何でも作りたかった…。お城ファンの方にはこの模型の意義を分かっていただけますよね?

材料費だけで膨大になりますから、今回の模型は、私だけの趣味の範囲では恐らく出来なかったことです。作りたいとは前々から思っていましたが、まさかこのような規模で実現するとは…本当に感謝しています。

{A25620A1-8C4E-40D5-9C9B-DC9F730AB9EA}


怒涛の製作記録(その2)

3月上旬に、飯田丸五階櫓の基本彩色まで完了した。
{F97CCB32-A2AC-48A4-965A-67578EE8801A}
(3月6日の飯田丸五階櫓模型)

飯田丸五階櫓から製作を開始したのにはいくつか理由があった。

《図面がCADデータであったこと》
CADデータを手持ちのイラストレーターに落とし込むことができたので、図面をそのままなぞっての設計が可能だった。宇土櫓は原図を読み込んだpdfデータだったので、原寸に拡大した時に線が太くなって鮮明でなくなるため、飯田丸五階櫓で作業感覚に慣れた上で設計するのがいいと判断した。


《宇土櫓は失敗したくない》
飯田丸五階櫓は失敗していいということでは無く。飯田丸五階櫓は複雑だがコンパクトで、まずは組み上げ方に問題がないことを確認し、感覚を掴んだ上で、宇土櫓ではさらに改良・改善を加えることを考えた。



3月10日の朝、トンボさんにデータを送信している。飯田丸五階櫓の設計と製作で窓の構造や破風の収まりなど熊本城独特のくせを掴めていたため、設計はスムーズに出来た。
これらのレーザーカット部品が届くのが3月19日。パーツが出来上がるまでのこの待ち時間に、目標を立てて製作を進めた。


【天守】

〈目標 : とにかく建物を進める。できることならばレーザーカット部品が届くまでに完成させる。〉


曲げる
{C6C48D35-1BE5-4A97-8C93-73105800A2A3}

貼る
{92E2FF7B-21AB-4973-8399-0D2A36AC2418}

合わせる
{E86CCFAC-CD90-4736-8679-D4E15BA4F841}

作る、塗る。
{E9E67EF4-9A62-467C-A092-18A3271324FA}
最上階はほとんどを石屋模型店特製のエッチングパーツに置き換え、透明プラ板を挟み込んでガラス窓を表現している。)

木製模型をやった方ならばお分かりかと思うが、木製模型は「カット調整」の言葉が鬼門で、かなりの仕事量をこの一言で説明してあり卒倒しかける部分がたびたびある。材質的にプラのように融通が利かない箇所もあり、納期に向かって急いで作るには精神的負荷が大きかった。
木製模型は、時間をかけてゆっくり、じっくり楽しみながら作るホビーのものであることを感じた。

石垣。この石垣下地板の貼り込み作業は妻がやってくれたので本当に助かった。
{60574720-71C9-4BD4-8FD6-CFE1F7423600}

下見板の押縁は全てプラ材を使ってディティールアップしたが、一月の時点で大部分終わらせていたので、残しておかず大正解であった。
{C612E399-7FE8-45F0-86F9-A5AAB438D1DB}
(木とプラというあまり相性がいいとは言えない素材同士なので、ストレスのかかる作業だった。)

実はこの期間中、3月13日からやっと本腰、と思ったところで、娘からインフルエンザをもらい、14日から16日まで寝込んでいる。
目が覚めてはつくり、辛くなっては寝て、を繰り返す。

高熱で朦朧としながら、ふと小天守下の石門のことが頭をよぎる。

「確か、石門は崩れたんだよな…」

「作らねば」

なんだか使命感のようなものが湧いてくる。

●3月17日
石門の図を引いている。
{33EAD6A8-09FA-410D-BBF5-188F5F094DB4}
(正確な図面がなかったので、様々な角度の写真から図面を起こした)

この日、天守の外光撮影をしている。
{D29AF9BF-062E-4AF6-BF27-43A8B7472E0F}
小天守の唐破風の張り出しと、大天守の唐破風の付櫓状の入口を残し、建物部分がほぼ出来上がり、気が大きくなってジオラマづくりに舵を取った面も否めない。

今回唯一の進路変更となり、この後苦労することになるが、結果的にはジオラマ仕立てにしたことは正解であったと思う。



[この期間は同時に他の2基も進めている。
この辺りから就寝時間が夜中の3時頃になる。
また、大きな模型を3台同時進行のため、リビングをはじめいくつもの部屋が熊本城に占領されはじめる。]


【宇土櫓】

〈目標 : レーザーカット部品が無くてもできる部分は仕上げる。〉


最上階は内部も作るため全てプラ製である。
単独での製作が可能であった。

内外の壁。
{9F9A4BDA-328C-42B3-9C5E-8F9F3505459E}

小屋組。
内部も作るので、屋根は取り外し出来るようにした。
{C1D72F9A-A355-475E-BD07-A951A422AF1D}

平瓦の貼り付け。
{36C01754-A682-4C2F-959B-7298F715DA03}

軒先を整える。
{15E2FC58-B40D-415E-8467-ED38457C1924}

エッチングの軒瓦を取り付けた時に、本物のように軒瓦を浮かせることが出来るような形に調整した。
{A6B1CD1D-CB52-44C9-881B-F3BA78E1FA48}

床や天井、手すりなど内部も実物のように再現した。
{90F6DCD7-7778-4790-9101-DD1EDD08D4BE}

鯱は削ったプラ棒とプラ板の寄木造。
{D6EAF6D2-88DB-45A5-BF30-FB9E1ECCFD60}
(背景にはエバーグリーンのプラ材の袋の山が見える。今回の製作では約30種類を使い分けた)

この他、宇土櫓は、各層外壁の下見板を、私が切り出し、妻が図面に合わせながら押縁を接着するという共同作業で進めた。飯田丸五階櫓で感覚を覚えていたので、製作はスムーズかつ正確に進んだ。


【飯田丸五階櫓】

〈目標 : 石垣面を終わらせておく〉

レーザーカットされた石垣の曲線ガイドが届いたら、直ちに石垣が組み立てられるよう、石垣面となるスチレンボードへの彫り込みを行う。

城内側は完成させた。
{F4CF511B-1862-4187-9C94-DA6803BE452E}

高石垣部分は妻と半分ずつ。写して彫るだけなので時間はあまり取られなかった。第一、いつもの石粉粘土と違い、力が要らないのが救いであった。
{33F5A3BF-C837-4E0B-B17D-2EA4A95628B0}


そして3月19日、レーザーカット部品が到着!
{5614F55E-7D5F-41A7-BFB2-38EFC4771CE4}



本当の試練はここからであった…


納期まで
あと20日!