パル・ヴァンナリーレアク「カンボジア 花のゆくえ」

 

 

ポル・ポト政権時代に強制結婚させられ、両親が行方不明になったという女性による小説。

ポル・ポト政権時代からその後の内戦時代を生きる10代の少女ミアルダイの成長の物語である。
 

主人公ミアルダイは富裕層の高校生。

父ソコンは、旧友の息子ボライが母親と貧しい生活をしていたので自宅に住まわせ、大学に通わせている。

わがままお嬢様のミアルダイはボライを貧乏人の居候と蔑んでいて、父親も頭を悩ませている。

ボライも自分が嫌われているのを知っていてミアルダイにはあまり関わりたくないのだが、ソコンに気を遣って暮らしている。

 

クメール・ルージュがプノンペンを占拠した1975年4月17日、ミアルダイたちは家を追い出されて強制移住させられ、重労働をさせられることになる。

父ソコンは家族がバラバラにされないために、ミアルダイとボライに夫婦であるふりをするように頼む。

ボライには故郷に恋人がいたが行方不明になっていた。2人は仕方なく人前では夫婦というふりをするがミアルダイの冷たい態度は変わらない。やがてミアルダイは心身ともに病んでいく。

父ソコンはオンカーに反抗したと見なされ連行され、そのまま戻ってこなかった。

ポル・ポト政権が崩壊すると、父を亡くしたミアルダイはボライの母親とともに生活するようになる。

妹として優しく接してくれるボライに、ミアルダイは自分の過ちに気づいて気持ちを変えていく。

ミアルダイはボライを好きな気持ちに気づくが、ボライは自分の友人のソティーとの仲を取り持とうとしていた。

そしてボライはかつての恋人と再会し、ミアルダイも伯母や従兄弟と再会するが・・・

 

これまで読んだカンボジアを舞台にした小説はオンカー(クメール・ルージュの革命組織)の支配の下での悲惨な状況がたくさん描かれていたが、これはちょっとひと昔のメロドラマか少女漫画みたいな物語である。実際にカンボジアではドラマ化されたらしい。

でも男女の恋愛の駆け引きの様子は国民性なのか、とても控えめ。

最初の頃のミアルダイのわがままで失礼な態度、主人公なのにこんな嫌な子なんて・・・とも思わせる一方で、チャラい男のことは嫌っているし、カンボジアの文化や伝統は守ろうとする真面目なところもある。

ポル・ポト時代の後のミアルダイは勉強して国のために役立ちたいと願い、不正を許さないという毅然とした態度を示し、ボライも政府軍に参加して国の再建に貢献する様子が描かれている。

混乱の時代から国を良くしたい、平和を取り戻したいというカンボジアの人の純粋な願いが描写されていると感じた。

この作品が書かれたのは80年代で、ポル・ポト派を追い出したベトナムに支援を受けた政権が作ら時代。

そのため、社会主義よりの描写が見られる。

 

これまで読んだカンボジアの物語とはちょっと違う路線だったけど一気に読める内容でした。

 

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