フィリップ・ショート「ポル・ポト ある悪夢の歴史」

 

 

著者は元BBCのジャーナリストで伝記作家。毛沢東やプーチンの本も出している。

カンボジアの独裁政権下で国民の弾圧や虐殺を起こしたポル・ポトの生涯、カンボジアの混乱した歴史が書かれているが、「ある悪夢の歴史」というタイトルの如く、読むのが悪夢のようだった。

それは残酷な描写がたくさん出てくるとかいうことではなく、めちゃくちゃ分厚くて重い本で読みにくい(私は外出する時に本を持ち歩いて電車の中で読むことが多い。つまり荷物が重くなる)し、淡々と出来事や証言が書かれていてあまり起伏がない上に、1950年代から現代までカンボジアの状況が混乱しすぎていて理解するのが難しいからである。

(「面白い」と言える内容ではないが、以前に読んだポル・ポト政権下の悲劇を体験した著者によるノンフィクションのほうがサクサクと読み進められる)

著者は「クメール人が元々残虐性を持っていて、しかも怠け者なので奴隷扱いしないと働かない」と言っているが、さすがに極端である。

なぜ残虐行為が起きたのか、結論を出すのは難しいが、多くのカンボジア国民が亡くなったのはヒトラーがユダヤ人に敵意を持って意図的に殺したのとは違って、反抗する人物を排除するために殺したという点もあるが、食糧を十分に与えずに無茶な労働をさせたから結果的に飢餓や病気で死んでしまった、秘密を守るために怪しい行動をとる奴は仕方なく殺してしまった、という構造はなるほどと思った。(しかしそんなことで死んだ人たちは本当に報われない)。

シアヌーク殿下もポル・ポト政権崩壊後に首相になったフン・センも決して善人ではないこともよく分かった。

アメリカや日本だってもちろん無関係ではない。

とにかくベトナムとの関係を含めてぐちゃぐちゃなので難しい内容だし、結局ポル・ポトの真意もよくわからないのだが、負のスパイラルの恐ろしさを感じる。