コン・ボーン「殺戮荒野からの生還」

 

 

引き続きカンボジア関係の本を読んでいます。

著者のコン・ボーンはフランス植民地時代のカンボジアに生まれ、英語を勉強し、日本の報道機関の現地助手として働いていた。

当時はクーデーターが起こり、ロン・ノル政権時代のカンボジア。

政治や軍には汚職や不正がはびこり、さらにポル・ポト率いるクメール・ルージュが首都プノンペンに迫っていた。

プノンペンが陥落すると、著者も首都から郊外に強制移住させられる。

外国の新聞社で働いていることが知られると処刑されてしまう危険があった。

しかしアメリカではなくて日本の報道機関だから大丈夫だとなぜか楽観的なジャーナリスト仲間が職業を明かしてしまい、一緒に処刑場に連れて行かれてしまう。

遺体を埋める穴の前で首を刺されて殺される人たちを見て、なんとかその場から逃亡した作者は裸同然の格好で何日もさまよい、故郷を目指す。

収容所での強制労働を経て、のちに難民キャンプに入り、一緒に働いていた日本人と再会したことがきっかけで難民として日本に住むことになり、カンボジア教育支援基金を設立してカンボジアに学用品を送ったり学校を建設することになる。

それは教育の欠如、無知がカンボジアの悲劇につながった原因でもあるからだ。

 

ポル・ポト政権時代より前にベトナム軍に捕まった体験も書いてあり、凄まじい混乱ぶりが伺える。

書いてあることは著者個人の体験だが、同じような体験をした人、それを生き延びられずに亡くなった人が何百万人もいたことを考えると恐ろしく悲しい。

日本人のジャーナリストも行方不明(おそらく殺された)になった人がいたとは・・・

現代の日本人には想像もつかない状況で生き延びた著者の力強さ、そんな状況でも思いやりのあるカンボジアの人たち、そして教育の重要さが伝わってくる内容だった。