原田マハ「暗幕のゲルニカ」

 

スペイン・ゲルニカの空襲を描いたピカソの作品、「ゲルニカ」をめぐるサスペンス。

主人公の瑤子はニューヨーク近代美術館(MOMA)のキュレーターでピカソの研究者。

911のテロで夫を亡くし、アメリカ国務長官が国連本部でイラク攻撃を宣言したとき、背景にあった「ゲルニカ」のタペストリーに暗幕がかけられていた。

これから戦争を始めようとするときに、反戦や戦争の悲惨さを訴える絵をわざと隠したのか??

瑤子は「ピカソと戦争」という企画展を行うために、スペインのマドリッドにある本物のゲルニカを借りようと交渉する。

かつてMOMAにあったゲルニカがスペインに返却されてからは国外に出たことがなく、不可能と考えられていた。

そしてその絵を狙う何者かがいるらしい・・・

 

現代の話と交差して、スペイン内戦でゲルニカの空襲が起こり、ピカソが1930年代に「ゲルニカ」を描いた時代が当時の恋人でアーティストのドラ・マールの目線から語られる。

パリに滞在していたピカソだったが、第二次世界大戦が始まりパリはナチスの手に落ちてしまう。

作品を奪われないために、スペインから逃れてきた富豪のパルド・イグナシオは「ゲルニカ」をアメリカに亡命させる。

 

ピカソやドラ・マールという実在の人物が出てくるので、どこまでフィクションでどこまでノンフィクション??と迷ってしまうのだが、そこがまた面白かったりして。

アートがテロや戦争と戦う強いメッセージを伝える、というテーマなのだろうけど、実際には現在も戦争が続いているのは悲しくなるな。

 

アートの専門家で海外生活をする日本人女性、巨匠の名作を持っていた謎の女性が実は・・・という点は前に読んだ「リボルバー」にも似たような設定があったな。

アートとミステリーを絡めたような話は原田マハならでは。面白かったです。

 

「ゲルニカ」のレプリカは東京丸の内のオアゾにもありますよ。

一度見たら目に焼き付いてしまう、ものすごいインパクトの作品です。

 

ピカソが描いたドラ・マール

(以前に西洋美術館で見ました)