吾輩はバスである。

名前はまだない。

どこで産まれたかって?

もちろん亀山湖だ。

春先、陽の当たる水通しの良い固い底の浅場で人間どもが次々と投げてくる疑似餌から父上が守ってくれたのを記憶している。

吾輩はこの時初めて人間というものを見た。

しかし、あとで聞くとそれは産卵床を攻める人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。

この獰悪な種族は子孫を残そうと必死で我々を守ってくださっている父上を至近距離から様々な疑似餌でしつこくしつこく攻めてくる本当にえげつない種族だそうである。

しかしその当時はなんという考えもなかったので別段恐ろしいとも思わなかったが自分が子供たちを守る立場になった今、毎年の春先が怖くて怖くて仕方ない。

これは純粋な疑問なのだが、なぜ亀山湖の釣り師たちは”この疑似餌が釣れる”という噂が流れると猫も杓子も同じ疑似餌を使うのだろうか。

吾輩のような昔気質のあまのじゃくは上っ面の流行などに左右されることなどないが、初期刺激に弱い仲間たちはその流行の疑似餌に騙されてしまうのもまた事実なのだが。

それと場所もそうだ。

”あの場所が釣れる”という噂が流れると性懲りもなくすぐ同じ場所に船団になって全員が重りが下で疑似餌が上に付いている仕掛けを揺らし続けている。

もう見飽きたわい。

人間ども、吾輩のような大物と呼ばれるバスを釣り上げたいなら頭を使ってまわりの釣り師たちとは少しだけ違う疑似餌や場所を攻めてみると良いかもしれないぞ。

だが吾輩はこれからも人間どもの疑似餌などには騙されず当分の間生き残るだろう。

そしてこの亀山湖で太平を得る。

ありがたいありがたい。
と日本を代表する文豪、夏目○石氏をインスパイアしながらバスの気持ちになって受付と出船前の写真を掲載してみたとさ
