ここはとある予備校。予備校に通う高校生の成 歩登夫(なる ほどお)が教師である良切 海(よきり かい)の教室で経済について学んでいます。前回の話

 

海:さて改めて銀行の貸し出しが経済に与える影響力について話していこう。これまで中央銀行と銀行とでお金の量を調整するとは言ってきたけども、銀行業は実は経済成長もコントロールしているんだ。

 

歩:経済成長って言葉はなんとなく使っていますけど、本当のところはどういうことですか?

 

海:うーん、そーだなー。以前、国内総生産(GDP)の話をしたのは覚えている?

 

歩:覚えています。一年間の取引総額でしたよね。売れた物の数×販売価格で表されたものですよね。

 

海:そうそう。経済規模の指標の一つが国内総生産だった。この国内総生産が昨年と今年を比較して増えれば、経済成長した。減れば経済収縮したと言えるんだ。(ここでは輸出入は除く)

 

歩:その国内総生産も銀行業が調整できるんですか?

 

海:そうなんだ。銀行業が市場にお金を貸し出すことで、消費活動が活発になり、経済成長を促進させるんだ。その理由は2つある。

 

ひとつ目は、貸し出されたお金に利子がついているためだ。借りた側は、借りた額面より多くのお金を返さなきゃならないから、借りたお金を使って事業や商売を展開する。

 

例えば、1,000万円借りたらすぐに設備投資などに使うんだ。これだけで消費が増えて経済成長の要因となる。

 

 

 

 

歩:借りたままではなんにもならないですもんね。借りたお金を使うだけで、経済成長するんだ…

 

海:そして2つ目の理由は、貸し出されたお金は市場に残り、潜在的な購買力を増やすからなんだ。

 

さっきの例で言えば、1,000万円で設備投資したということは、1,000万円を受け取った人がいるということだよね。その人もまた1,000万円を使って購買することができるので、市場の購買力が増えたと言えるんだ。

 

 

歩:なるほど。お金は1回使っただけでなくなるわけではないですもんね。一度貸し出しによって市場に供給されたお金は何度も購買の機会を作っていく。そんな感じですね。

 

海:そのとおりだ。

 

歩:だけど、先生。経済成長とは物とお金のやり取りが活発になることだから、お金だけ増えてもだめで、生産する物も増えないといけないんじゃないですか。

 

海:それもそのとおりだ。だけど、企業が昨年度より物を多く生産しようと思ったら、昨年以上に物を造る機械や材料を買わなきゃいけない。

 

その時にもやはりお金が必要だ。さらに造ったものを買ってもらうにもお金が必要だ。社会全体が物をより多く生産するにはお金が必要だし、物の生産増に見合うお金の購買力も必要なんだ。

 

歩:なるほどー。まずお金ありきなんですね。

 

海:そう。この図でいうと、銀行からお金(水)が流れていかないと物の取引額(水槽の大きさ)も大きくすることができないんだ。

 

 

まとめると、銀行貸出によって創られる利息付の新しいお金は、新たな消費を増やし経済成長を促進させる。そして、銀行が生み出すお金の量を調整している中央銀行が経済成長をコントロールしていると言えるんだ。

 

歩:へー。今回は特に勉強になりました。お金がないと物も造れないし,

物を買うこともできない。つまり経済成長しない。よくわかりました。

 

参考文献 :天野統康 著『あなたはお金のしくみにこうして騙されている』徳間書店(2011)注アマゾンのリンクです。