
・郭公や村にひとつの露天風呂
俳句に固有名詞を使うことが。
固有名詞とは、いろいろな出来事、物の名称や人物、土地、国の
名を表する名詞のこと。
この固有名詞には、句にふさわしいものであれば、豊かなイメー
ジを読み手に再現させる力があると言われています。
では、俳句に使う場合、有効な手立てというものはあるのであろ
うか。
人物については、誰にも分かるような知名度の高い人が詠みや
すいですし、共感をよぶものと思われます。
たとえば、次の句。
数え日や少女かなでるベートーベン 文子
ブログ友のご母堂の句ですが、すべてを言い切らない、俳句の
奥義をみるような、とても秀逸な作品です。
数え日とベートーベンで、「第九」と言わずとも、かなでる曲目を
連想させます。
ベートーベンという固有名詞も多くの人の知っているものですの
で、鑑賞者の共感を得ることができます。
次に、地名については、芭蕉が、とりわけ名所は季語と同様な重
い役割があると述べています。
季語に本意があるように、地名には持っている文化や特色、背負
っている歴史があります。
そのため、作者はそれらを充分理解し、それらの力や言葉の響き
を生かさなければなりません。
固有名詞は、一句の中ではほどほどにあって、ほかのフレーズを
引き立てなければならないとも。
そのため、単に住んでいる地名や家の裏山の名前とかを織り込ん
でも、それは単なる報告、説明に過ぎず、力を発揮しないことになり
ます。
国号についても、同じようなことが言えると思います。
周知のとおり、俳句は小さな器。
固有名詞には重みがあり、強い力を持っていますので、初心のうち
は、 それらに負けてしまうことがあるため、 安易に「信濃かな」とか
「みちのくの」などと使うのを戒める先達が多いようです。
自らを顧みてみると、固有名詞を使ったのは、山や画家、幾つかの
楽曲くらいのもの。
なかなか使い切るまでには、いきません。
・夏空や八海山のみづの音
なお、あえて具体的な固有名詞を使わずに、普通名詞を使うことで、
読み手には自分の知っているイメージを作って貰うことが出来ます
ので、初心のうちはお薦めです。
・さんざめく蜜柑の花や船着場