ひかりのもと
公開されたら必ず観る映画監督が4人いる。
クリント・イーストウッド、リック・ベッソン、クリストファー・ノーラン、そして最もアメリカにアメリカらしさを求め願うオリヴァー・ストーン
「ワールド・トレード・センター」
5年後に製作されたこの映画を観ていなかった。直視できる自信がなかったのかもしれない。記憶は飛んでいる。
救助に入った港湾警察官が、ビルの崩落でエレベーター・シャフト逃げ込み、瓦礫の下敷きになる。身動き出来ず救助を待つ。無線機で要請するが応答はない。
「痛みは友達だ。痛みを感じているのは生きている証拠だ。」と励まし合う。
関係者らしき車が来ると悲しい知らせは聞きたくないと家の奥に逃げる妻。僕が探しに行くと言う息子。別の妻は産まれてくる子供の名前を埋もれている夫と口論になったが夫の希望通りしようと思う。
現場では熱量から拳銃も暴発する。
時間は流れる。
リタイアした海兵隊員が現場へ正装して赴く。
当然入れる。日が落ちて暗い中、生存者を探す。
家族は疲弊していく。
身動きが出来ない救助を待つ者は、互い話すことでゼロタイムが来ないことを願う。

彼らのことは映画を観れば分かる。
R.I.P

同時代に生きている人々全員が感じているこの閉塞感とは

戦争も知らない僕らには比べる尺度もなく、他に比較もできない。でも、その深刻さは言葉で表現できるレベルではない。僕らには何が出来るか。一つは希望を持つこと。希望といっても信念のような、とてつもない、未来への渇望だ。

絶対生き抜く。絶対負けない。
ああ、友達と美味いもん食ってエエ酒飲みたい。

 

僕が生まれた1962年にリリースされた、フィリップ・K・デイックの クラシックSF小説は、ヒューゴー賞受賞するなどして、
彼の最高傑作のうちの一つと言われる。存在は知っていたが、
翻訳ミステリー以外に興味の無かった僕は、いわゆる
未読スルーしていたが、先日本屋の店頭で新装されたパッケージを見て、「ああ、これだ」と買ってしまった。
が、よくよくみてみると、新装といっても以前のものと、変わったのは1984年なので、いかに見ていなかったか。
ストーリーは第二次世界大戦で連合軍側ではなく、枢軸側が勝利し、アメリカ大陸の中西部から東をドイツ、西部を日本が分割統治しているところから始まる。ドイツは戦勝国なので、元帥ゲーリング、宣伝相ゲッペルス、SSのハインリヒは当然生きている。砂漠のキツネ ロンメル将軍も現役ではないが健在。「大農地計画」と名付けられた、原子力を使って"地中海"を封じ込め、排水し、耕作のできる農地に変える計画を、ナチスは90%成功したが、不幸にして、、とそれ以上の記載はないので成功しなかったようだ。
旅客用ロケット・メッサーシュミット9Eはスカンジナビア、サンフランシスコ間を45分で飛ぶ。アメリカ大統領フランクリン・D・ルーズベルトは、再選される前にジョー・ザンガラによってマイアミで暗殺されており、次の大統領はトルーマンではない。といろいろエピソードが出てくる。
ストーリー内において、ドイツ人、特にナチスは、残虐で狂喜じみている人種という扱い、日本人は高慢なところはあるが、ドイツ人程、他民族を見下すことはなく、比較的好意的扱い、イタリアは  ドイツの従国という感じ。
主要登場人物のうちの三人も『易教』を行動指針に求め、ことある毎に卦を占うので不思議に思ったが、当時、著者フィリップ・K・デイックも、易教に傾倒していたためらしい。
このジャンルは 「歴史改変SF」と呼ばれ、他にも数々あるらしいが、他と違うのは、この小説内に登場する「イナゴ身重く横たわる」という、実は連合国側が枢軸側に勝利し、アメリカと、イギリスで 枢軸側を分割統治しているという「歴史改変SF」小説が、広く流通していて、熱狂的支持者がかなりいる。アメリカ全土で発禁になっているらしいが、容易に入手できるようだ。著者は、要塞のように  まわりに電流を通じた鉄条網が張りめぐらしてあり、山奥にある 屋敷に住む。自身で「高い城」と呼んでいる。この小説内の小説により、読み手は、現実と小説とその内部、小説の間の行き来を 余儀なくされる。
このストーリーのもう一つの柱である、南北戦争時に使用された 銃等アンティークの模倣品のエピソード。製造、販売、仲介人に 対するクレーム、返品。模倣アンティークに見切りを付けて宝飾品製造、販売へと転換し、また、トラブルに巻き込まれて逃避行する男女のほうは、犯罪小説のエルモア・レナード風だ。ただし、E.レナードのほうがもっと緻密に作りあげてある。
わくわくの期待を持って読み始めたがそれほどでもなかった感ありです。まあ、57年前だから仕方ないかな。前提&枠組みは面白いのになぁと思っていたら、アマゾンビデオが2015年からテレビシリーズをスタートしていてもうシーズン4まで製作されているらしい。製作総指揮が、エイリアン、ブレードランナーのリドリー・スコットなので、こちらは大いに期待できる。