三度目の統一戦争は、ルドラムが勝利国となった。
「勝ちましたね」
「僕は何もしてないケドね、結局」
ふふ、と笑うセラティヤの傍ら、ルドラムでの戦いで常に側に居た白と茶の斑の猫の少年もつられて笑う。
「いつも足手まといというか、役に立たないというか」
「ていうかいなくても同じ? みたいな? わー寂しーい!」
ほんの少しだけ離れたところでは愛玩サイズの猫から人間と同じ程度の大きさの猫まで、おおよそ10匹程が小さな勝利の宴を開いていた。
彼らは皆、まだ幼さの残る少年兵として、一連の戦いでセラティヤの下、戦うつもりで、けれどいまいち活躍の場を逃したまま、怪我もなく生き延びた者達だ。
「セラさんは、戦争が終わったら、どこか別の国へ行かれるんですよね」
「んー多分、ね」
大方ミューラルあたりがダーツなんかで次に振り分ける国でも決めてるんじゃないかとセラティヤは思っている。
寝ている隙に所属国が変わっているなんてそんな風な“神の気まぐれ”以外に理由も原因も思いつかない。
「次はどこの国へ?」
「僕にはわかりかねるねー」
「じゃあどこへ行きたいとかないんですか?」
「行きたいって? んー、そうだなあ」
最初に訪れた、棲家も建てた自然の多い国を思う。
次に訪れた、悪夢の心地よい死の臭いが近い国も思う。
そして今、新しい仲間が出来た獣の国をも思う。
けれどまだ、知らない国の方が多い。
「どこでも、いっかなあと思うよ。どこへいっても、僕は僕で、変わらないもの」
「……本当にセラさんって変わった人ですよね」
「あはは、よく言われるー」
「でも、面白くて楽しくていい人だと思います」
「うんそれもよく言われるケド、どうかな」
多分それは正しくはない。
そう自分で思っている。
「……そういえば、セラさんは結局最後まで俺の名前を聞いてくれませんでしたね」
「あれそうだっけ」
「そうです」
「うーん、うっかりしていたよ」
否、聞く必要がないと思って最初から聞く気もなかったのだけども。
「まあもう明日にはお別れだし。別にもう今更。いいじゃん」
「……本当に、変な人ですね。セラさんは」
「ふふ、ヒテイはしないよ」
夜が更けても宴は止まず。
獣たちの祝いはもうしばらく続きそうだった。