中略より

 

 

 

師匠から、

「見て覚えろ。とにかく盗め。」

というのが教えだった。

今の時代では、

「教えてください。」

と言えば、お金を払えば教えてくれる。

 

何度、

「そこは、どうやったらそのようにうまくいくのですか?」

と聞きたかったことか。

 

見るだけでは、なかなか覚えられない。

寝る前にも、

「とにかく思い出せ」

と自分の頭に言い聞かせ、翌朝、師匠が工場に入る前に

炉に火を入れ、思い出し「打つぞ」

「打てる」と言い聞かせる。

その繰り返しだった毎日だった。

 

私は技術を盗めた。

 

「盗む」とは今では汚い言葉として使われがちだが、

当時では、職人を目指す者には「技術を盗むんだ」と

自分を奮起させたものだ。

 

私はオルゴンをするにあたって、

弟子を持ったこともないし、

お金をいただくこともなかった。

そこだけは貫いた。

 

 

人のためを想う人に盗んで欲しかった。

 

 

私には、

このオルゴンリングを手にしてもらえる

このオルゴンリングで人が笑顔になってくれる

 

ただ、それだけが望みだった。