不斉ペーパークラフト | 有機化学勉強会

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下に示した化合物にように、不斉炭素原子が存在していなくてもキラルになる化合物があります。軸性キラリティーや面性キラリティーをもつ化合物です。「これらの化合物は本当に両エナンチオマー同士を重ね合わすことができないのか(つまり、本当にキラルなのか)?」ということを確かめたいとき、どうしますか。

分子模型を使って2つのエナンチオマーを作り「確かに重ね合わすことができない」と確認するのがいいと思います。しかし、分子模型がなくても簡便に確かめることができるツールがあればいいな、と思い、以下の『不斉ペーパークラフト』を作成しました。かなりくだらないものですが、軸性キラリティーや面性キラリティーの原理を何となく感じることができます。

 

不斉ペーパークラフト作成法

① 不斉ペーパークラフト用ChemDraw ファイル(ここからダウンロード可能)を開け、File → Page Setup...でA4・縦に設定し、またDocument Settings...でDocument Size をHeight: 2 pages, Width: 1 page に設定する。その後、A4 両面印刷する。

② 破線に沿ってハサミで切り、各ピースに分ける。

③ 太線部分にハサミで切り込みを入れる。

④ 2 つのピースの切り込み部分を差し込み合う。

作成法は以上です。

 

不斉ペーパークラフト作成例

① ビナフトール・・・軸性キラリティーをもつ化合物。立体障害により、炭素-炭素単結合が回転できないため、キラリティーが生じます。

↑左側がR 体、右側がS 体です。

両者を重ね合わそうとしても、重ね合わすことができません。つまり、キラルな化合物です。

 

② アレン・・・軸性キラリティーをもつ化合物。2つのsp2 炭素部分の平面が直交しており、R1≠R2 ならキラリティーが生じます。

 

③ フェロセン・・・面性キラリティーをもつ化合物。R1≠R2 ならキラリティーが生じます。

↑分子を上から見た状態です。

CH3 とPh を重ね合わそうとして裏返すと、Fe が付いた面になってしまい、重ね合わすことができません。↓

 

④ トランス‐シクロオクテン・・・面性キラリティーをもつ化合物。二重結合の平面部分が8 員環に対して垂直方向に立っており、キラリティーが生じます。

筒状になっている環を無理やり裏返すと、逆のエナンチオマーに変わります。この
ような変換過程は速くないため、それぞれのエナンチオマーを別々のものとして単
離することが可能です。↓