情報過多の現代で、家づくりに失敗した典型パターン | オーガニックスタジオ新潟社長の奮闘記 │ おーがにっくな家ブログ

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「オーガニックスタジオ新潟」社長のブログ。かっこいいエコハウスを提供するために日夜奮闘中。役立つ「家づくりの知識」は、オーガニックスタジオ新潟のHPにて更新。このブログでは個人的な関心ごとと「工務店経営」についてがテーマ

ある太平洋側の工務店に寄せられた住宅相談に、
今どきの家づくりにおける問題が凝縮されていました。


FBの業界関係者が非公開でこの件が議論されましたが、
一般の方にも知ってもらうことは意義があると感じまして
記事にしました。

 

以下、FBからの転載です。





「半年前に新築したのだけど、
夏が暑くて大変だったので対策したい」という
リフォーム工事のご相談がありました。

調べてみると、実は2年近く前に、
新築工事で資料請求頂いていた方でした。
当時の資料請求の内容を読み返してみると、

「建物は45坪ほどを考えておりますが、
建物の予算3000万円では厳しいでしょうか?
UA(Q)値およびC値を教えてください」
との内容でした。

「ご要望事項をお伺いしておりませんので、
建物の仕様が定まりませんが、
自然素材を用い、安全で健康な住宅を求める場合には
難しいものとなると思います。
UA(Q)値およびC値については、
どのような住まいを望まれているかによって
変わって参ります。」

と返しておりました。
そのあと返信ないままでした。


話を聞いてみると、
弊社も含めいろいろと検討した結果、
他の住宅会社さんで新築し、この春に完成したとのこと。

数値的にはUA値:0.43 、C値:0.2、ηAC値:1.3、
耐震等級3としっかりした高性能の住宅とのこと。

新築してたった半年だし、
瑕疵担保責任もあるので、
新築された住宅会社さんに相談したほうがよいと
お答えしたのですが、
どうしても相談に乗ってほしい
とのことでお話をお伺いしました。
なぜその住宅会社を選んだのかを
聞いてみたところ
「自然素材での家づくりで、高気密高断熱で、
結果的にコストバランスがよかったから」とのことでした。

図面を拝見すると、高気密高断熱を謳ってはいるけど、
使っている断熱材は大手の吹きつけウレタンフォームA種3。

設計段階で省エネ計算を依頼し、
日射制御の検討もしたらしいのですが、
窓庇は窓の高さの1/4程度。
残念ながら日射遮蔽がまったく考えらえていない
(としか思えない)設計内容でした。

「暑さ対策を考えてほしい」との
ご依頼を頂いたのですが、
南面の2階の大開口窓がFIXになってしまっていて、
窓外にスダレやスクリーンの設置が出来ないものでした。

東側の窓にも15cm程度の庇が付いているのですが、
日射制御には何の役にも立っていませんでした。

4KWのエアコン一台で冷房を計画していたそうで、
この夏は暑くて過ごせなかったとのこと。
東と南の窓から結果としておそらく
4KW以上の日射熱が差し込んでくるのだから、
エアコンの冷房能力を超えてしまっていました。
冷えるはずがありません。

暑さ対策として提案できることは限られてしまい、
東側の窓外にグリーンカーテンとすだれの設置。
南側の窓はどうにも出来ないので、
エアコンを増強するしかないと回答させてもらいました。

「コストバランスがよかったから」ってことで
住宅会社を選んだそうですが、
結果的にコストかかってしまう感じです。


FBグループの他のメンバーにも
こんな相談がとっても多いとのことです。

築半年で不満を抱えてのリフォームを考えているこのケース。
様々な問題を抱えてますが、 どこにその原因があるのでしょうか?

私見をまとめます。

① 住まい手側が中途半端な情報収集で終わっていること
数値性能の重要性までは理解して、作り手に要望は出したが、
「木を見て森を見ず」の状態で終わっている。

② 建築の相場観がずれていた。 
まともな木造注文住宅ではどれくらいかかるものか、
我々作り手も、情報発信しないと、このようなミスマッチは続出する。
邸別の固有差異があるものなので、難しいことだが、重要だ。

③ 情報過多の時代なのに失敗する
どうもこの方は、他のFBグループの他の工務店にも相談に行っていることが判明した。
メジャーユーチューバーのラクジュ不動産のみならず、私の動画も視聴して勉強をしていたという。 

いくら情報を収集しても、判断軸がしっかりしてないから、よい判断ができない。

結果、失敗し、後悔し、情報収集は何の役にも立ってない。

④ 不信の家づくり
最初に相談に行った、この工務店の技術や実績を信じて、
可能な範囲でどこまでできるか、納得いくまで相談に乗ってもらえば別の結果になった可能性が高いが、
「性能は大事だけど、将来も不安だし、お金は出せない」
との判断で、結果的にコストで家づくりを決めて、
できてからも、不満で、実際に作った工務店への相談ではなく、
いまだに業界をさまよっている。

⑤ 何よりも、「作り手側の建築無知」は、施主を不幸にする。
知識と経験と検証が必要だ。
「言われたことをそのまま作ればよい」で終わらせるのではなく、
プロとして、住まい手側の要望を、成しえないものは、成しえないと、
キッパリ根拠をもって言える作り手であらねばならない。

住まい手が、建築無知な業者を選んでしまったこともよろしくない。

総じて、今回のケース
業界全体での家づくりで、特別に悪いケースとは思えなく、
むしろ 家そのもののハードウエア自体は、粗悪ではなかったかもしれない。

読者の、未来の住まい手さん。
今回のケースを他山の石として、

施主力を高めるケーススタディーで学んでください。