竹中大工道具館・・・木造建築の技術に驚嘆する | オーガニックスタジオ新潟社長の奮闘記 │ おーがにっくな家ブログ

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9月の飯塚さんとの建築二人旅の蔵出しです。

 

竹中大工道具館を見学してきました。
新幹線の新神戸駅から程近いところにあり、
ゼネコンの竹中工務店が管理している。



かつての社有地、ということですが、
竹中工務店の元会長の邸宅跡地を利用していると
近所のおばあちゃんと話していて聞きました。

沿革を調べると、
「1610年、初代竹中藤兵衛正高が創業し、
神社仏閣の造営を業とする」とあります。

もともと宮大工からのスタートなので、
大工の伝統技術に対して、会長様は、
深い思いをもっているのではないだろうか。

大工道具のコレクションを通じて
一般の方々にも木造伝統建築の
素晴らしい技能を見ていただくための博物館である。

2016年に開業し、
当時は 美しい建築事例として業界で話題になった。

その建物の内外も楽しみで、
ぜひ この方面に来た場合は、
見ておきたいところであった。

 



気品あふれる門構えが美しい。

 


軒を深く張り巡らした、
日本建築の要素をモダンにデザインした本館。

 



内部も、伝統的な手法である手斧の削りを使った
コクのある質感の、ナラ材の無垢の建具が出迎える。



床も国産のナラ材の無垢板19ミリのフローリング。

 

本物のしっかりした素材と、木造らしさを生かしたモダンな内部空間。

 


圧巻なのは、階段の段板が無垢の板を削り出している。

 




天井も無垢の吉野杉の1本1本を
伝統的な仕口で組んでラインで表現している。

奇跡的に、無垢なのにそりが全くない。


外部以上に内部が素晴らしい。

建物も素晴らしいが、展示が素晴らしい。

この道具館を見ることで、
「建築を成り立たせているのは、
道具の進化であること。」が痛感できる。

 


例えば、縄文時代の時は木を切り倒すときには、
石斧を使っていた。

それが稲作と同時にもたらされた、
製鉄の斧が用いられることになる。

さてそこでクイズです。
直径20センチ弱の栗の木を切り倒すのには、
石斧で、何回叩く必要があったのか?


答えはなんと、再現実験の結果は、900回以上だった。
切断するというよりも、木の繊維を打ち砕く作業だ。
だからとても労力がかかる。
そして、精度もあったものではない。

それが弥生時代の鉄の斧になると、
今まで無理であった、杉やヒノキのような
針葉樹を切り倒すことができて、
より長くまっすぐな木材を使えるようになった。

現代の道具であるチェーンソーを用いれば、
わずか数秒で切断することができるだろう。

 

 



道具の進化は、作業性の進化でもあり、
出来上がる建築物の精度へとつながっていく。
道具が全てなのです。

時代が飛鳥時代になると、
朝鮮半島経由で、建築技術が導入されたことで、
神社やお寺のような巨大な建造物も可能になった。

 

(ミクロン単位で削れる大カンナ)

さらにノミやカンナのような、
加工道具が進化してくると、
繊細な数寄屋建築のような建築も可能になっていく。

道具の進化を通じて、
建築技術の進化を深く学ぶことができる。

 

 

 

 



大工の棟梁は、「五意達者」と呼ばれる
5つの分野において優れている必要性があった。

図面理解と墨付け、金勘定も含めた計算能力、
そして、意匠設計、大工技能、彫刻技能。

現代においては、構造計画から意匠設計と、
現場の仕事に至るまで、
すべての分野においてのプロであることが要求されていた。

 

 

 



江戸時代の大工の教科書も手に取ってみることができるが、
高度な数学や間取りの標準パターンなどの
知識を学んでいたことがわかる。

江戸期では、寺子屋での読み書きそろばんで、
基礎的な教育水準が世界でも高かったことと、

丁稚奉公の制度によるOJTで、
技能が伝承されいったのがよくわかります。

 



薬師寺の柱構造を等身大で再現されて展示されてますし、

 

 




宮大工西岡常一の唯一の内弟子である、
小川 三夫氏が、丸一年かけて作った
法隆寺五重塔の模型は圧巻です。

唯一無比の価値のある建築模型であるのに、
国所有の博物館ではなく、
竹中工務店の所有品なので、
より近くで見ていただきたいとの想いで
アクリルの囲いも無く、
間近で見ることができることが素晴らしい。

 




ほかにも、建具職人が1年がかりで作った
超絶技巧の組み子の建具の展示。

 

 


極限まで薄い、木舞と塗り壁の展示など

大工の技能だけではなく、
その他の職人の手仕事の展示も用意されている。


竹中工務店の社会貢献。
目に見える形での実践がとてもすばらしいと思いました。

この竹中大工道具館には、木造建築をやっている、
特に若者たちは早いうちに、1回は行っておいた方が良い。
自身の仕事観が変わることはまちがいないです。

ディープな木造建築の世界に、
3時間程度、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

案内を務めるシニアアドバイザーの
ガイドについて展示を見ることを強くお勧めします。

高度で深い知識を持っていらっしゃるから
すぐ質問しても答えがいただけるし、
効率的学ぶことができます。