【ニュース】農協不祥事、被害140億円超 44都府県、横領常態化 | 専従日誌

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徳島県農協労連専従のブログ 農業再建、農協革新の取り組みや活動紹介など



 全国の農協職員による勤務先での横領や窃盗、詐欺といった悪質な不祥事が、昨年3月までの10年間に少なくとも1427件あり、被害総額が144億5000万円を超えることが24日、分かった。所管する各都道府県への取材や情報公開請求に対し、44都府県が明らかにした。 被害額は毎年10億円を超え、長年にわたり常態化。民間の金融機関は明らかにしていないため比較できないが、金融機関としての信用性が問われ、政府の規制改革会議で進む農協改革の議論にも影響を与えそうだ。北海道、富山、沖縄の3道県は非開示とし、取材にも答えないため対象に含めていない。また、10県は文書の保存期限切れを理由に数年度分の不祥事だけを開示した。

 全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「異常な件数で、金融機関の意識があるのか疑問だ」と指摘している。全国農業協同組合中央会(JA全中)は取材に「再発防止や未然防止の指導を徹底する」と回答した。農協の不祥事は都道府県への報告が義務付けられている。開示請求で入手した資料や取材によると、44都府県に報告された不祥事は03年4月以降の10年間で、入金遅延や現金紛失を含め計2186件。うち悪質性の高い横領・着服、現金や商品の窃盗、架空融資などによる詐欺が1427件あり、多くは懲戒解雇や諭旨解雇となった。一方、刑事告訴・告発されたのは2割以下。本人や親族が弁済し、それを理由に刑事手続きが見送られたケースが多い。横領をした職員の所属は、融資や貯金業務を担当する信用部門が4割と最も多く、購買、共済部門は2割ずつだった。複数年にわたる着服が多く、同じ農協で別の職員によって横領が繰り返された例もあった。

 こうした行為が農協や警察を通じて公表されたのは500件程度とみられる。各農協によって公表基準に差があり、積極的に公表する農協もあれば、組合員にも明らかにしないケースもあった。

 14県がこの期間中の横領や詐欺を理由に、農協に業務改善命令を出していたことが25日、各県への取材で分かった。14県は山形、福島、長野、愛知、鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、佐賀、長崎、大分の各県。うち広島、佐賀は各5回、香川が4回、長野、愛媛は各2回命令を出していた。

 JA全中は「組合員や利用者の信頼を裏切る行為で申し訳なく思う。原因を分析し、改善点を洗い出すなど、不祥事ゼロを目指して指導を徹底したい」とのコメントを出した。