【トリビュート🎁】


私はまた落ち込んでパニックになりかけていた。


そんな折、

年上の友人が、更に年上のご友人と過ごした時の素敵なお話をしてくれた。


高齢のためコロナ禍を気にして疎遠にしていたが、挨拶兼ねて連絡するとすぐに電話が来て翌日にはデートが決まったらしい。


80代、元雑誌編集者の女性。

久しぶりの待ち合わせ、指定された先は街の花屋さんだったらしい。


少し早めに着いた友人は一面ガラス張りの店に入った。明るい室内に漂う花の芳香に包まれ、瞬間的にその香りに癒されたと言う。

到着した友人と一緒に店を周り、素敵なインテリアやオブジェに収められた植物を目の保養に眺めながら歩いた。


そして昼はご婦人のおすすめのパン屋へ移動すると、今度は焼きたてのフランス産小麦の香りに包まれてランチ。

大きなクロワッサンのサンドイッチ、それを大口で頬張りあっという間に平らげた豪快なご婦人にびっくりしたらしい。

ゆっくりお茶をしながら近況を報告すると、頭の回転もよくポイントをささっと掴んで的確なアドバイスまでしてくれたという。

そして家庭の事情により短い時間で切り上げて去って行ったが、友人は幸福感に包まれ、元気を貰ったと語っていた。


待ち合わせする前からすでに「ストーリー」が作られていて、指定された場所も全てにおいて婦人の仕掛けとセンスが散りばめられていたのに気づいたと言う。


集大成をひとときの逢瀬に集約して体現してみせたご婦人。


本当の豊かさとは、きっとこういうこと


それを考察して話してくれた友人のセンスにも


心を配らないときっと気づけないはず。


私が忘れかけていた豊かさ、相手に対する尊重と愛情。

お金、時間、空間の使い方で紡ぐ物語。


過去を振り返った時、思い出すのはどんな風景か

そんなことも考えてみる。


光と芳香に包まれた高級なお店、仕立ての良い服、お洒落な二人の婦人の微笑む姿が目に浮かんだ。