女川の帰途、そのまま埼玉に帰るのはもったいないと、かねて懸案の、朝日連峰の大鳥池の取材ができないものかと天気を睨み、右往左往しながら結局、新潟から北上して鶴岡に向かい、大鳥集落に着いた。28日の午後である。
雨は降ったり止んだり。私のもっとも苦手とする状況で、あっさりと予約してあった「青嵐舎」という宿にもぐりこむ。値段は高いが、料理は絶品。おまけに女将がステキときてはお薦めしないわけがない。1泊二食料金、8700円は安いと思わねばならない。宿は古材を使った古民家造り。この手の通なら、言葉少ない亭主に目を留めるところだが、彼は沢登りに精通したれっきとした山屋の出身。女将の親父は、朝日連峰を股にかけたマタギそのもの。聞き出そうと思えば、いくらでも山の秘伝を知ることができるだろう。
朝起きても、天気は一喜一憂。山の端が陰ったかと思うと雨が降り、日差しが射したと思うと再び雨。取材者を泣かすのに刃物はいらないのである。雨が一滴降ればいい。どうにか大鳥小屋にまでは行こうとするも、雨が私の足を鈍くする。
女将から無農薬の野菜をふんだんに戴き、未練を残して大鳥集落を後にしたのだった。